片山東熊(1854-1917)は工部大学校造家学科の第一期卒業生であり、明治を代表する建築家の一人である。本研究はこれまで公開されることの無かった同家所蔵史料を閲覧・調査する機会を得て、現存する葉書、写真、サンプル帳を中心とした研究である。まず綿密な書誌学的研究をおこない、それをベースとして東熊の交流関係を軸に、建築との関係を解き明かすことを目的とする。 これまでに撮影した史料について内容を項目別にまとめ、葉書の内容や差出人との関係を明らかにした。またサンプル帳やスケッチ、模型写真については東熊の設計作品との関連を追求してきた。また平成24年度には、それ以前に未調査であった片山家資料中の辞令類をすべて閲覧し、ナンバーを振り実測・撮影調査することができた。それにより現在、片山家に残る資料の全貌を把握することができたことになる。さらに伊勢徴古館・農業館で平成23年度に得た図面類を詳細に分析し、伊勢神苑会の業績について考察をおこなった。徴古館・農業館の図面データを得たことで、研究はさらに進展を見せた。 最終年である平成25年度に残された課題は、片山家資料でもっとも点数の多い葉書資料について、未解読箇所を解明することであった。近代の葉書資料の研究者の協力を得て、校閲が進み、片山家資料集を完成させることができた。また伊勢徴古館・農業館図面による伊勢神苑会の業績に関しては、学会の審査が通り、学会誌に論文が掲載された。 磯俣祐介・原正彦・渡辺洋子「神宮徴古館・農業館に関する一考察」日本建築学会計画系論文集 第78巻 第691号,2031-2037,2013年9 月
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