研究課題/領域番号 |
23560775
|
研究機関 | 文化学園大学 |
研究代表者 |
安野 彰 文化学園大学, 造形学部, 准教授 (30339494)
|
研究分担者 |
内田 青蔵 神奈川大学, 工学部, 教授 (30277686)
勝木 祐仁 日本工業大学, 工学部, 准教授 (00508989)
|
キーワード | 衛生 / 設備 / 明治 / 大正 / 邸宅 / 住宅 |
研究概要 |
これまでの結果を踏まえつつ、明治半ばから昭和初期にかけて100冊以上発行された検定済み家事教科書を使い、換気、採光、便所、風呂、台所等の衛生に関連する記述を精査した。例えば採光については、人間も動植物と同じ生物であるため人体にも太陽光が必要だとして、老人室と小児室が重視されたこと、人工採光の記述が明治末から急増し、有害瓦斯の発生が問題視される一方、電灯が衛生面から早くから評価されることなどが明らかになった。換気については、天井高や空気の通り道としての縁側や廊下の確保が明治30年代から提唱され、明治末年からは西洋家屋と日本家屋が対比されることなどが確認された。 一方、『大日本私立衛生会雑誌』(明治17年創刊)から住環境に関する記事を抽出し、当時の環境観を考察した。記述される環境要素は明治20年代前半まで水が多く、30年代以降は空気や日光が増える。20年代以降は病原菌に関する記述が増えるなど、科学的視点から環境の理解が深まったとみられる。住宅設備では便所と井戸が最も多く、相互距離の確保、不浸透性材料の使用が繰返し主張されていたことなどを明らかにした。 また、建築雑誌については、暖房をはじめとする、衛生、住宅設備に関する記述の整理と分析を進めた。 以上の事柄を実際の建築物と対照するために、重要文化財として残されている、明治から大正期に竣工した邸宅について、移築や修理工事等の報告書を収集して分析を進めた。このうち、諸戸清六邸、芝川又右衛門邸、西郷従道邸、夏目漱石旧宅、学習院官舎、広瀬邸、萬翠荘などについては、現地での目視調査を行った。新居浜の広瀬邸では、明治19年の時点で和室での暖炉設置や居室での天窓一体型の瓦などの存在が特筆され、書物での記述に見られたような衛生的な住環境のための意識や実践が早くから存在したことが確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2013年1月に研究代表者が膝を負傷し、計画の後倒しを余儀なくされた。職場復帰後に取戻す予定だったが、回復が芳しくなく、併せて気管支炎を患うなど、万全の体制が取れない状況が続いた。そのため、遺構調査を延期するなど進捗に支障を来した。一年を通じて体調不良を脱することができず、その結果、昨年度までの遅れを引きずることとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに明らかにしてきた記述内容の分析を、遺構調査を踏まえた実例の分析、インフラその他の社会環境などと関係づけて再考する。そのために、追加の遺構調査、補足の文献調査等を適宜実施しながら、研究を推進する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
2013年1月に研究代表者が膝を負傷し、計画の後倒しを余儀なくされた。職場復帰後に取戻す予定だったが、回復が芳しくなく、併せて気管支炎を患うなど、万全の体制が取れない状況が続いた。そのため、遺構調査を延期するなど進捗に支障を来したため。 延期のため実施が出来なかった遺構調査のための交通費或いは旅費、その分析や全体のとりまとめ作業に要する複写費、論文投稿費などに使用する。
|