関西の近代建築史における「京都」の歴史的意義については、極めて独特な建築思想の形成と系譜が創り出されてきたと考えられる。この報告では、戦前の京都帝国大学から戦後の新制京都大学へと至る歴史的変遷での建築学科(意匠系)の知的原風景に着目した。 大正9年に創設された京都帝国大学建築学科では、主任教授・武田五一を中心に、学問的自由と個性豊かな創造を尊重した学風が強く育まれ、武田の後を担った森田慶一、そして増田友也へと受け継がれた。この森田と増田を中心に展開した建築論研究を「京都学派の建築論」と総称するなら、それは如何にして形成されたのか。本報告書は、かかる問題視に基づいた基礎的研究の成果である。
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