本研究の目的は、近世公家住宅における復古の実態解明にある。とくに近世貴族社会の最上位に位置する五摂家のうち、近衛家、鷹司家そして九條家について、近世における本宅屋敷の位置、規模、焼失再建等の沿革を確認したうえで、復古の実態を詳細に検討した。 本研究が解明した要点は、三家とも復古が具体化するのはおおむね17世紀頃であること、天明大火後の復古再建では裏松固禅の研究や施主(当主)の意向が反映されているとともに、絵図御用をつとめた大工木子家による実施設計も関係していることなどであり、また九條家が復古をとりわけ重視し実現してきたその背景には、二條家との密接な関係があることなどを推論した。
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