研究実績の概要 |
拡散型変態(Replacive)も変位型変態(Displacive)も、変態過程は、原子の拡散、格子の集団変位、内部組織の形成など実空間で議論される場合が多い。これに対して、これらの相変態を、形成相を特徴づける濃度波(R変態)や格子波(D変態)の励起-増幅-伝播の過程として捉え、濃度波と格子波を統一した結晶波に基づいてk空間の理論を構築するのが本研究の目的である。本研究の具体的な成果の一つは、定式化に際して自由エネルギーの2階微分行列を求めることが必須であるが、この行列式の消滅条件から、平衡状態図に系の自発的な安定性の破れを示す臨界安定線が導入でき、相平衡-揺らぎ-前駆現象の3者の系統的な解析が可能となることである。k空間での変態を考える長所は、揺らぎに対して自発的に系の安定性の破れる温度・組成(あるいは圧力)を相平衡状態図(以下、状態図)に書き加えることができる点である。前年度までに、Fe-Pt, Fe-Niに対してかかる計算を実行したが、今年度はさらにFe-Niに対して、格子波の不安定性を検討すべく、連続変位クラスター変分法の適用を図り、磁気転位温度の計算を行った。
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