研究課題/領域番号 |
23560786
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉田 清和 大阪大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 特任研究員 (50263223)
|
研究分担者 |
西 竜治 大阪大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 准教授 (40243183)
森 博太郎 大阪大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 特任教授 (10024366)
|
キーワード | 電子線トモグラフィー / 超高圧電子顕微鏡 / 自動撮影 / 高速撮影 / 遠隔観察 / オートフォーカス |
研究概要 |
本研究は、通常の方法では多大の労力と時間を要する「超高圧電子線トモグラフィー」の観察を、自動化および高速化の手法を開発することにより「高速自動撮影法」を確立することを目的としている。そのために次のような項目を開発する。 1、試料を傾斜した際のフォーカスの変化を補正するための、新しいアルゴリズムのオートフォーカス。2、試料を傾斜した際の試料位置のずれを補正するための、制御画像を用いた画像認識による視野位置補正。3、上記1、2、が高速で行える制御用画像の新しい 撮像方式。4、自動撮像シーケンスによる一連のシリーズ画像の高速撮影 本年度は3について開発を行った。1、2、に用いる制御用画像のS/N比が精度に影響することが明らかになっているので、従来は最もS/N比が高い画像記録用冷却CCDカメラの画像を制御画像用にも用いてきた。ただし所要時間が長いという問題があった。この問題を解決する手法として、制御用画像を別の専用カメラで高S/Nで撮影できる構成にした。光路切り替えの方法として、いくつか考案したなかから2組の光学系を用意し高速で切り替える方法を選択した。制御画像撮像カメラとして高感度のCMOSデジタルカメラを用いた。また、操作室から試料傾斜装置と連動して、撮影のタイミングや画像転送ができる制御装置を製作し、一連の動作の一体性にも努めた。この結果、1枚あたり冷却CCDの場合露光時間4秒に処理時間を含めると約17秒要していたものが、露光時間0.5秒で約1秒で撮影できるようになった。上記1,2、の処理には計6枚の制御用画像が必要であるため、この1枚あたりの時間短縮はトモグラフィー自動撮影の大幅短縮の実現につながると考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究概要の欄に示したうち、本年度の目標は下記の 1、試料を傾斜した際のフォーカスの変化を補正するための、新しいアルゴリズムのオートフォーカス。2、試料を傾斜した際の試料位置のずれを補正するための、制御画像を用いた画像認識による視野位置補正。3、上記1、2、が高速で行える制御用画像の新しい撮像方式。4、自動撮像シーケンスによる一連のシリーズ画像の高速撮影のうち3,の項目である。 当初候補にあげていた蛍光板の表裏の同時撮影は顕微鏡本体の大幅な改造を要するため行わなかったが、エアーシリンダー駆動による光路切り替え方式によって目的の画像取得の方法が実現できた。この方法で概要欄に示したように制御画像の高速取得が実現できた。 撮像位置はX線管理区域であるので実際の動作に必要な操作室からのレンズのフォーカス、撮影操作などの制御装置を作製した。また、顕微鏡本体の指示によって制御されている試料傾斜装置と連動して撮影を同期できるなどの実際の運用時に必要となる一体性の制御回路も作製実装した。 X線環境下ではカメラの撮像素子をX線が貫くことが原因となる白点ノイズが発生するが、今回の実験中に素子の種類によってノイズの発生状況が異なる結果が得られており、このメカニズムの究明も進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は概要欄で述べた4、自動撮像シーケンスによる一連のシリーズ画像の高速撮影の開発を進める。そのために、今回行った方法によって得られた取得画像を1、2、で行っている画像処理の制御画像に利用できるように処理ソフトの変更が必要となる。トモグラフィー撮影の全体のシーケンスについても今回の高速化に伴って最適な設定、例えば傾斜角度何度おきにどの処理を行うのかなどに変更が生ずると予想される。これに加えて、最適な撮影の制御の本体との一体化を進めていく。このための制御回路、タイミングの設定なども行う予定である。得られた成果の全体を統合し、当初目標のトモグラフィー高速自動撮影のシステムを構築する。別途行っている遠隔観察とも組み合わせて実際のシステムの評価も行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度も当初予定した成果をほぼ得られた。従って、次年度の研究計画に変更はなく当初予定通りの目標を完了させるべく計画を進めていく。 研究費は制御回路の製作、ソフト変更、測定器購入、打ち合わせ旅費、評価実験旅費、成果報告旅費などに使用する。
|