研究課題/領域番号 |
23560788
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
圓山 裕 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20181836)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 磁気モーメント / 正の圧力効果 |
研究概要 |
Au4Mn規則合金におけるAu L2,3-吸収端のX線磁気円二色性(XMCD)の圧力変化を常圧から最高50GPaまでの範囲で測定した.XMCDに関する磁気光学総和則を適応することでスピン磁気モーメントと軌道磁気モーメントの大きさを評価し,その圧力変化を求めた.その結果,常圧から10GPaの範囲で磁気モーメントに関する「正の圧力効果」を見出した.この圧力効果の大きさは,磁化に関する0.6GPaまでの先行研究の結果と良く一致するものの,10GPaにも及ぶ高圧まで維持される事が初めて分かった.10GPa以上の圧力下では,磁気モーメントは指数関数的に減少する.この10GPa付近で結晶構造の変化が起こるのかどうか,実験報告は皆無であった.そこで,高圧下のX線回折実験を行った.その結果,最高20GPaまでの高圧印加の下でも構造相転移は起こらないが,圧縮率の急激な減少を伴う事が分かった.即ち,10GPa付近では結晶の対称性に変化は無いが,磁気モーメントの圧力応答が正から負に転ずる,ある種の転移現象(iso-morphic phase transition)と解釈される.しかし,高圧下での原子の移動と電子状態の変化の間の関係については未解明である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高圧下での電子状態(磁気状態)と構造変化の間の関係については,未だ得られた情報量が少ないので具体的なモデルの提案までには至っていない.温度変化の実験や理論計算によるシミュレーションなどが不可欠と考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
10GPa付近での磁性の変化に関する情報が少ないので,今後,温度変化の実験と局所的磁気構造に関する磁気EXAFS測定を推進する計画である.また,結晶構造の温度変化についてもX線回折実験を通して更に情報を得る必要がある.金属間化合物における高圧下での構造相転移を伴わない物性の変化は,iso-morphic phase transitionとして高圧物性の新しい研究分野の形成に繋がると推測される.
|
次年度の研究費の使用計画 |
ダイヤモンド・アンビル高圧セルのダウンサイズ化を進めて,温度変化の測定を現状よりも容易にする.金属材料を購入して合金試料を作製し,単結晶を育成する.単結晶試料を用いて,主要3軸方向の磁化を測定して磁気異方性を評価する.作製したインゴットを用いて薄膜あるいはナノ粒子の作製を試みる.バルクとナノサイズの試料で磁気特性の相異を調べる.
|