研究概要 |
本研究では,地上において液体合金中の相互拡散係数を測定し,相互拡散係数Dが濃度に対して示す依存性および拡散メカニズムの検証を目的とした. 本実験では2種の組成の異なるSn-Pb合金同士で拡散対を形成し,Snのモル分率N(Sn)=0.05, 0.5, 0.8, 0.95の4条件で実験を行った.拡散温度は773Kとし,4本の拡散対を用いて同時に同条件で拡散実験を行った.まず,2種の合金間にあるセル(中間セル)のみ位置をずらした状態で,固体試料をシアーセル装置に挿入し,試料の加熱・溶解および約3hの均質化を行った.この際密度が重力方向に単調増加するよう,密度の大きいPb-richの試料を下側に設置する安定密度配置を用いた.その後中間セルを回転させて拡散対を形成し,拡散実験を行った.1hまたは3.5h保持後,試料を20個に分離し,冷却・凝固を行った. ICP-OES分析より得られた試料の濃度分布を作成し,拡散理論式をフィッティングして拡散係数を算出した.シアーセル法を用いることにより,加熱・冷却中の拡散,及び凝固偏析の影響を除去した. 4つの平行実験より得られた拡散係数の標準偏差は最小で3.5%,最大で12.0%となった.このような差が生じた要因としては,組成によって測定する濃度の値が異なり,濃度測定時の誤差に差が生じたためと考えられる. Sn, Pbの自己拡散係数D*の文献と,熱力学計算ソフトThermo-CalcTMから算出した活量係数をDarkenの式に代入し理論曲線を作成した.純金属に近い組成での拡散係数は理論値に近い値を示したが,他の組成では理論値よりも高い値を示した.また一方でManningは,Darkenの式に補正項Sを掛けた場合,より正確に固体中の拡散係数を算出できると報告している.液体の場合にフィッティングできる補正項Sが大きな値となるのは,小さな原子充填率で説明することができる.
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