研究課題/領域番号 |
23560794
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
田中 孝治 独立行政法人産業技術総合研究所, ユビキタスエネルギー研究部門, 主任研究員 (40357439)
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研究分担者 |
竹下 博之 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (20351497)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 積層型 / 水素吸蔵合金 / 水素吸蔵・放出特性 / 向上因子 / 初期構造 |
研究概要 |
圧延組織の微細さ(純Mgと純Cuの層の厚さ)の異なる3種類(Fine、Medium、Coarse)のMg/Cu超積層体(Mg:Cu=2:1)を作製し、ジーベルツ装置でH2 圧3.3MPa、573Kでの初期水素化、hp-DSC装置を用いた繰り返し水素化・脱水素化を行い、試料の水素吸蔵・放出特性、構成相、微細組織を調べた。理想的な水素化過程では、純Mgと純Cu が反応してMg2Cuになり、そのMg2Cuが水素化して1.5MgH2+0.5MgCu2の混合物となると考えられている。Fineな試料では、hp-DSC装置でわずか1サイクルの加熱・冷却で、純Mgと純Cuの初期構造から最終状態である1.5MgH2+0.5MgCu2の混合物となり、10サイクルまでの繰り返し水素放出・吸蔵に関してMg2Cuの水素吸蔵・放出一段階反応が安定かつ速やかに継続できた。一方、Medium、Coarseな試料では、10サイクル後でさえCuと未反応のMgの残留を示唆するM単独の水素吸蔵・放出反応を含むMg2CuとMgの水素吸蔵・放出二段階反応であり、Mg2Cuの水素化を示す発熱ピークが低温側にテールを引くなど、明らかに水素化が遅いことが分かった。さらにXRD測定より20サイクル後のCoarseの試料には未反応のCuが残存し、Mg2Cuの生成が完了しないことも分かった。初期構造の微細さの違いにより、Mg2Cuの水素化とMgの水素化のどちらが支配的か変化し、それに応じて吸蔵量、水素吸蔵・放出特性も異なることが明らかになった。また、MgH2の水素放出時の潜伏期と水素放出速度についての情報を得るため、一定温度での水素放出量-時間測定を行った。駆動力一定の測定では、温度の上昇とともに潜伏期が著しく短くなる傾向があり、構成原子の拡散の影響が大きいことが伺えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では材料組織と材料物性を結び付けて材料設計指針を提案していくが、初年度において早くも初期微細構造の違いによる吸蔵量、水素吸蔵・放出特性の違いを実証し、かつその基本的な反応メカニズムについてもほぼ解明できたため。
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今後の研究の推進方策 |
(1)2Mg+Cu→Mg2Cu ⇒ Mg2Cu+1.5H2→1.5MgH2+0.5MgCu2、という初期水素化過程と競合する次の反応:2Mg+2H2→2MgH2 ⇒ 2MgH2+Cu→1.5MgH2+0.5MgCu2、が実際に起こることを証明する。(2)Mg-Mg2Cu共晶組成など、更なる微細組織の形成が期待されるバルク組成を持つ超積層体の作製とその組織と水素吸蔵・放出特性の評価。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画および方針に基づき、実験及び理論計算を実施するための消耗品等の支出に主として研究費を充てる予定。
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