研究課題/領域番号 |
23560794
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
田中 孝治 独立行政法人産業技術総合研究所, ユビキタスエネルギー研究部門, 主任研究員 (40357439)
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研究分担者 |
竹下 博之 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (20351497)
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キーワード | 積層型 / 水素吸蔵合金 / 水素吸蔵・放出特性 / 向上因子 / 初期構造 |
研究概要 |
第一に、初期水素化過程において2つの反応プロセスが存在し、生成される微細組織が異なることを、SEM観察により明らかにした。すなわち、 プロセス1:MgとCuの合金化とその後のMg2Cuの水素化がMgの水素化に先んじる場合。4Mg + 2Cu = 2Mg2Cu (1)、2Mg2Cu + 3H2 = 3MgH2 + MgCu2 (2)という反応が起こり、3MgH2 + MgCu2の3次元網目組織となる。 プロセス2:Mgの水素化がMgとCuの合金化に先んじる場合。4Mg + 4H2 = 4MgH2 (3)、 4MgH2 + 2Cu = 3MgH2 + MgCu2 + H2 (4) という反応が起こり、MgCu2が層状に成長する。 反応(2)は、良く知られたMg2Cuの水素化反応であるが、反応(4)は、水素雰囲気下での水素化物の分解反応で有り、一般には知られていない。そこで、MgH2とCuの混合ペレットを水素雰囲気下で加熱し、MgH2とCuの間にMgCu2が生成することをSEMならびにXRDで確認し、実際に反応(4)が起こることを証明した。 次に、反応(3)式のMgの水素化に関しては、MgH2の脱水素化時に明瞭な潜伏期が出現する一方、Mgの水素化時には潜伏期が認められないことが分かった。そこで、MgH2の脱水素化過程を測定しを古典的な核生成モデルに基づいて、潜伏期に関するデータ解析を実施した。その結果、MgH2の脱水素化過程において、①潜伏期τは、古典的な核生成モデルからの予測と実験誤差の範囲で一致すること、②τと拡散の活性化エネルギーEaの関係から求められたEaは、水素放出速度のデータから求められたEaと一致すること、③潜伏期τは、駆動力⊿rGの1.2乗に逆比例し、球形核モデルから得られるτ∝(⊿rG)の-2乗の関係からは、ややずれる事が分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では材料組織と材料物性を結び付けて材料設計指針を提案していくが、初初期微細構造の違いによる吸蔵量、水素吸蔵・放出特性の違いを実証し、微細組織が材料物性に大きな影響を与えていることを示した。水素吸蔵・放出特性の違いが、反応プロセスの違いによる生成微細組織の違いとして説明できる事の重要な証拠をつかんだため。
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今後の研究の推進方策 |
1.今年度、Mgの水素化が、①MgとCuの合金化より先に起こる場合、②MgとCuの合金化後、Mg2Cuの水素化より先に起こる場合、③Mg2Cuの水素化の後に起こる場合の3つの場合で、生成する微細組織が異なることを提案した。この提案を証明するため、Mg2CuとMgH2の粉体ペレットを水素雰囲気下で加熱し、3MgH2(s) + MgCu2(s)の3次元網目組織の最外殻はMgCu2の鞘構造になることを実証する。 2.初期活性化条件を振り、異なる組織を持ったMg2u積層体の作製とその組織と水素吸蔵・放出特性の評価。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画および方針に基づき、実験及び理論計算を実施するための消耗品等に支出するが、特に学会等での発表に重点的に研究費を充てる予定。
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