今年度は、詳細な観察の結果、次の事がわかった。初期水素化課程において起こる反応は、①Mgの水素化、②MgとCuの合金化、③MgとCuの合金化により生成したMg2Cuの水素化の3つあり、①の反応が②より早く起こるか、③より早く起こるか、③より遅く起こるかにより、3つの反応プロセスが存在し、それぞれ異なる3種類の微細組織を形成する。すなわち、プロセス1:MgとCuの合金化とその後のMg2Cuの水素化がMgの水素化に先んじる場合。4Mg(s) + 2Cu(s) = 2Mg2Cu(s) (1)、2Mg2Cu(s) + 3H2(g) = 3MgH2(s) + MgCu2(s) (2)という反応が起こり、3MgH2(s) + MgCu2(s)の3次元網目組織となる。この場合、網目組織はオープンな組織で、クローズしていない。プロセス2:MgとCuの合金化は水素化がMgの水素化に先んじるが、Mg2Cuの水素化がMgの水素化より遅い場合。プロセス1と同様の反応により、3MgH2(s) + MgCu2(s)の3次元網目組織となる。しかしながら、この場合、Mg2Cuの周りにはMgH2が存在し、3MgH2(s) + MgCu2(s)網目組織は、周りのMgH2にエピタキシャルに成長する事が優先し、オープンな組織にならず、クローズした鞘構造をなす。 プロセス3:Mgの水素化がMgとCuの合金化に先んじる場合。4Mg(s) + 4H2(g) = 4MgH2(s) (3)、 4MgH2(s) + 2Cu(s) = 3MgH2(g) + MgCu2(s) + H2(g) (4) という反応が起こり、MgCu2が層状に成長する。DSC測定での水素吸蔵・放出特性は、上記3種の微細組織の特徴から矛盾なく説明できる事もわかった。
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