研究課題/領域番号 |
23560796
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
北浦 守 山形大学, 理学部, 准教授 (60300571)
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キーワード | シンチレーター / 透明セラミックス |
研究概要 |
本研究では,高出力ミリ波・サブミリ波を用いた電磁波加熱によりPr3+イオンをドープしたLu3Al5O12(Pr:LuAG)セラミックシンチレーターを作製し,電磁波加熱の有効性を検証すると共に,高い発光出力と高速応答が可能なセラミックシンチレーターを開発する。遠赤外を用いた加熱では,物質全体をムラなく急速に加熱できるので,発光イオンが拡散して結晶粒界に到達する前に緻密化を終えることができる。そのため,結晶粒界で偏析しないように高濃度の発光イオンを添加できるので,単結晶を凌駕する発光出力がセラミックシンチレーターにおいて期待できる。 母体のLuAGは透明セラミックスが得られやすい立方晶である。従って,Pr3+:LuAGは電磁波加熱による透明セラミックシンチレーターの作製法を確立するために最適な物質である。昨年度は原料の一部に酸化ルテチウムを使ってグリーン体の作製条件を最適化してきたが非常に高価であるため,グリーン体の作製に限りがあった。そこで,昨年度途中から母体結晶LuAGをY3Al5O12(YAG)に変えて作製条件の最適化を行った。 予め合成されたYAG粉末を微細粉砕して得たナノ粒子を出発原料として作製した場合とアルミナとイットリアナノ粒子を出発原料として作製した場合で比較を透光性と密度の行った。いずれの場合においても透光性が確認でき,相対密度約85%に達していることが判明した。装置の不具合によって焼結温度を十分に高めることができなかったため,より焼結温度を上げることで透明性が実現できる足がかりを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
出発原料および添加剤の再検討,グリーン体の作製行程の再検討によって,低い焼結温度ながら透光性と高密度が達成できるようになった。高出力電磁波照射装置の故障さえなければ十分な進展が見込まれていたと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
24GHzの高出力電磁波焼結装置は現在修理中であるので,現在可動中の300GHzの高出力サブミリ波照射装置を使ってCe:YAG透明セラミックシンチレーターの作製を行う。現在,1600oCで焼結を行ってきたが,これをこえる1800oCで焼結を行い,透光性をより高めたセラミックスシンチレーターを作製する。 分散性や流動性を高める目的で,分散剤,可塑剤,潤滑剤などの使用も検討してきたが,現時点ではより良い方向に作用していない。有効に作用する組み合わせを引き続き検討して,よりよいグリーン体の作製条件を突き止める。 サブミリ波照射装置からのサブミリ波は周波数と出力が高いため,自己発熱反応が物質のごく表面近傍で起こる可能性がある。これについては一長一短はあるが,マイクロ波をこえる高周波数電磁波と物質の相互作用についてはまったく未知の領域であるので,ホットプレスなどとの高密度化過程の違いについて注視したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
補助金は,試薬の購入費,国内外での研究発表旅費,研究補助の謝金,として使用する。Ce:YAGの作製原料は昨年度購入している量で十分であるが,Pr:LuAGの作製には十分な量を有していないため,試料の購入費は酸化ルテチウムの購入にあてる。また,関連した成果を国内外で研究発表するための旅費もまた計上した。さらに,グリーン体の作製を大学院生に依頼するために研究補助の謝金を使用する。
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