研究課題/領域番号 |
23560799
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
掛川 一幸 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50009693)
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研究分担者 |
上川 直文 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60282448)
小島 隆 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70333896)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | TPV発電 / エミッタ材料 / アルミナ / エルビア / 共晶 / 超急冷 / 湿式合成 / SPS焼結 |
研究概要 |
アルミナとエルビアの混合粉体を棒状に焼結した後焼結し、一端をアーク放電炎中に入れ溶融、それを冷却することにより従来法に相当する共晶体を得た、またアーク放電炎中で融解した試料を超急冷することにより非晶体を得た。これを加熱処理することにより共晶組織が得られた。また、これらの試料を粉砕し、SPS焼結することによりバルク体を得た。これらのX線的評価、機械的評価を行い、TPV用エミッタとして使えることを確認した。韓国の嶺南大学を2回訪問し、共同にてエミッタの分光学的放射特性の測定アセンブリを完成させた。エルビア焼結体について放射赤外線のスペクトルの測定が可能であることを確認した。また、TPV発電のアセンブリを組み立てた。実際の試料について、負荷を変化させて電流-電圧特性を調べた。その結果、TPVセルとリード線との間の接触抵抗により正しい特性の得られないことが判明した。現在、リード線がはんだ付け可能か、またはワイヤボンディングを行うか、インジウム-ガリウム合金による液体金属を用いた接触を確保できるか検討中である。溶融固化による共晶組織の形成に加え、溶液からの沈殿による調製方法も検討した。塩化ガドリニウム、塩化アルミニウムの水溶液をアンモニア水、水酸化ナトリウム溶液、炭酸アンモニウム溶液に滴下して沈殿を得た。また混合溶液に尿素水溶液を加え加熱することにより沈殿を得た。これらにより、湿式によるエミッタ材料の調製のための予備的な知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は酸化エルビウム-アルミナ系を中心に、超急冷により非晶体を形成し、SPSによる焼結体を作製した。電子顕微鏡やX線回折によりそれらの形態を把握し作製法の検討を行った。この系に関しては目的通りの達成度となった。酸化ホロミウム-アルミナの系は他のいくつかの希土類酸化物-アルミナの系の検討として次年度に回す予定である。溶液法による試料調製の検討も始めることとなっていたが、酸化ガドリニウム-アルミナの系で検討を開始し、今後の溶液法のめどがたった。TPV発電装置を組み立てることになっていたが、実際に組み立て、ガストーチによりエミッタを加熱しプロペラモーターを回転させることに成功している。超急冷フィルム自体を使ったエミッタの開発は次年度に回す予定である。Yeungnam Universityに赴き熱輻射特性を測るための準備を行うことになっていたが、実際にアタッチメントを作製して酸化エルビウムの分光特性を測ることに成功している。 TPV発電特性の測定に関しては、計画以上にはかどっている。TPV発電特性の安定した測定のため、TPVセルの放熱器にファンを付けた形の測定アライメントを完成している。また、負荷特性測定のための負荷可変抵抗ボックスの作製も終えている。エミッタの機械的特性についてもすでに測定を開始している。 以上のように、研究の進行の効率化のため、一部を次年度に回した分、TPV特性の測定に関して前倒しとなっている。これらのことから、達成度はトータルで100%と言える。
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今後の研究の推進方策 |
作製したエミッタ材料の熱放射特性の測定を行う。組成を変えることによる相間の体積比を変えることと、熱処理条件による共晶組織サイズを変えることにより、熱放射特性がどのように変わるかを網羅的に調査する。先ず,共晶を用いて種々のエミッタ板を作製する。比較のため,従来法によるエミッタ板も作製する。これら熱放射特性の測定は韓国Yeungnam Universityで行う。Yeungnam Univerysityでは、熱輻射スペクトルを測定するための装置がすでに組み上げてある。測定のほとんどの作業は先方スタッフに依頼するが、2年目には3回訪問し,測定条件の詳細を打ち合わせるとともに,共同体制を確立する。またこの年度の中頃に訪問し,打ち合わせ通りの測定になっているか確認し,状況により軌道修正をする。 熱放射特性の測定と平行して,非晶体からの共晶の製造法についても改良を重ねていく。共晶組織サイズ、成分の体積比を振り、最適なTPVシステム条件を検討する。これらの作製法には液相法によるものも含まれる。これらの結果は、製造条件にフィードバックし、多くのカットアンドトライとともに、組織との系統性を見いだす。更に、機械的特性についても検討する。共晶組織は自己形成型のコンポジットであり、機械的特性の向上も期待される。これは、素子の耐久性に関連して重要である。この検討については、これまで多くの交流があり、世界的にも著名なUniversity of California, Davis校のA.K.Mukherjee教授の研究室の協力を得る(すでに了解済み)。さらに多くの希土類酸化物-アルミナ共晶系についても、熱輻射特性とTPV発電特性の検討を行う。これら、総合的な研究により、高性能TPVエミッタを得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
特に高額な物品、その他の経費は予定してない。エミッタ材料を調製するのに必要な消耗品、発電特性、赤外分光特性、機械特性測定のためのアライメントの部品などの経費を予定している。超急冷装置では、超急冷ローラーの研磨の経費を予定。SPS装置の消耗品などを予定している。赤外分光特性はYeungnam Univerysityに依頼するが、測定方法などにつき直接赴き打ち合わせる必要があり、韓国までの3回分の旅費を計画している。
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