研究課題/領域番号 |
23560799
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
掛川 一幸 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50009693)
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研究分担者 |
上川 直文 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60282448)
小島 隆 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70333896)
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キーワード | TPV発電 / エミッタ材料 / アルミナ / エルビア / 共晶 / 超急冷 / 湿式合成 / SPS焼結 |
研究概要 |
昨年度までに,アルミナ-エルビア共晶組成の超急冷体を焼結してエミッタを形成し,これを加熱輻射された近赤外線をTPVセルに照射し発電を行わせることに成功している。その電流-電圧特性を調べたところ,電流増加に伴う電圧減少が大きいことが判明した。これは,セルから電流を取り出すための電極-リード線間の接触抵抗が高いためである。本年度はその対策から始めた。電極の取り出しをワイヤボンディングにするか,Ga-In合金を用いるか,はんだ付けを用いるか検討した。最終的に低融点ハンダを用い,TPVセルへのダメージを最小にした電極の取り出し法を確立した。当研究での発電特性は,融液から形成させた共晶系エミッタを用いた既発表のものより数倍の性能の向上が認められた。さらに,エルビアの量を減らして検討した結果,1/10程度に減らしても変わらぬ特性が得られることがわかった。これは高価な希土類元素量を減らせ,大幅なコストダウンが可能になったことを示している。 更に,エミッタに用いる希土類元素を変えて検討した結果,他の希土類元素も有望であることがわかった。今後コストと併せて検討したい。 昨年度,尿素による沈殿法によるエミッタ製造を検討したが,組成制御が完全ではなかった。尿素は溶液を加熱することにより分解してアンモニアを発生することを利用した方法である。今年度はアンモニア水辞退をを沈殿剤にして条件を振って生成物の組成を精密に制御する条件を検討した。これにより,溶液から精密に組成が制御された非晶体を形成できることがわかった。今後,焼結特性を向上させるための条件等について検討を行っていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
デモ用および測定用TPV発電システムが昨年度完成し,今年度は電流が増えるのにしたがって,出力電圧が減少する問題の対策が完全にとられた。従来法のシステムに比較して数倍高い性能がこれまでに得られている。組成を変えて発電特性を検討することが計画に盛り込まれていたが,今年度の研究でその結果が判明し,希土類元素を1/10まで減らしても性能が変わらないことを見いだしている。エルビア以外の希土類を使った研究にも着手している。湿式合成も昨年度には製造可能である所まで進み,今年度は組成を精密に制御して製造することが出来るまでになっていて,計画通りである。エミッタの輻射のスペクトルの測定については,千葉大学にて分光装置への光の導入部分を作って韓国嶺南大学に送り,実際に出張して測定を行った。出張時の装置の不具合などで分光データはまだ得られていないが,計画では来年度までに出すことになっている。
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今後の研究の推進方策 |
現在の発電特性の検討は,発電特性を測定するところに重点を置いているので,単にバーナーでエミッタを加熱している。この方法では実用的な発電効率は得られない。発電特性の検討にはこれまで開発したもので十分であるので,これを用いて研究を進める。システムの効率を上昇させるにはそのための発電システムを新たに検討することが必要である。今後は,そのような発電システムの開発も行い,高効率な発電システムを目指す。 湿式合成に関しては,製造された粉体に関する焼結特性を検討し,より焼結活性の高い粉体を得る方法を検討する。 エミッタの輻射特性に関しては,国内の装置で借りられるあてがあるので,そちらを用いる方向で検討する。これまでは,韓国に出張した際に装置の不具合等があったため,国内での測定を優先させる方向で進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
特に高価な物品の購入は予定していない。昨年度に引き続きエミッタ製造に必要な薬品や消耗品の購入を計画している。超急冷装置の金属ローラーの研磨にも予算の使用を予定している。分光特性の評価,機械的特性の評価は他機関の装置を使わせて頂く関係上旅費を予定している。また,研究成果発表の場として国際会議への参加のための旅費を計画している。
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