研究課題/領域番号 |
23560800
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
宮嶋 尚哉 山梨大学, 機器分析センター, 准教授 (20345698)
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研究分担者 |
棚池 修 独立行政法人産業技術総合研究所, エネルギー技術研究部門, 研究員 (20415706)
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キーワード | ナタデココゲル / カーボンペーパー / 電気化学キャパシタ |
研究概要 |
本研究は,電気化学キャパシタ用の電極作製において,疑似容量を与える活物質の一つである金属酸化物との複合化と,内部抵抗を軽減するためのバインダレス成形化を同時に達成するようなカーボン電極部材を創出することを目的とする。また,そのプロセス開発を確立することを最終目標としている。 昨年度の研究成果により,ナタデココゲル(BC)を出発物質とすることで,金属塩担持カーボンペーパー電極が容易に作製可能であることが見出された。本年度は,種々の金属イオン水溶液(8種:Mn,Cr,Co,Ni,V,Sn,Mo,W)を用い,電極作製のための試料調製条件の探索と,担持金属塩が活物質として機能するかについてCV測定を用いて集中的に検討を行った。 BCに含浸させる金属塩水溶液の溶質には,各金属酸アンモニウム塩を用いるのが有利であり,それ以外では水溶液のpH調整が必要であることが示唆された。炭素化後は,Ni,Crを除き,含浸させた金属塩はBC中の酸素と自己反応して各酸化物に転換されたが,それらの金属酸化物担持量は,同仕込み濃度であったにも関わらず差異が生じた。また,この担持量の大きさに対応して各カーボンの比表面積は小さくなった。このことは,担持金属がカーボン中の細孔を塞いてることを示している。 電気二重層容量に相関する比表面積を基準に各CV曲線を比較したところ,BCカーボン自体は0.5F/m2程度であった。これに対し,金属酸化物担持が認められたカーボンでは,比表面積が小さくなっていたにも関わらず,BC単独のものと比べて流れる電流密度が大きい(キャパシタ容量の増加に対応)ことから,金属酸化物のレドックス疑似容量がカーボンの二重層容量に付加されていることを指示した結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果は,特許出願となり,各関連機関の研究成果報告会でも高く評価された。金属塩種によっては,同手法で酸化物担持が不可能であり,また担持量の制御も困難であるなどの課題点が判明したことは,今後の実用化研究においては大変有益であった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,炭素構造評価を専門とする山梨大の研究室とエネルギーデバイスを専門とする産総研との研究室に属する研究者同士で共同研究体制をとり,課題研究に取り組む。 実用化に向けては,金属酸化物粒子の担持量及び粒径の制御が不可欠であり,これらを簡便に調整可能な試料作製条件を確立する。今年度の成果から,Co,Mo,V,Wの4種がナタデココゲルを用いた本電極作製方法においては優位な金属塩であったことから,これらのイオンに限定して,より高性能のキャパシタ電極とするための作製条件の精密化を図る。また,バインダの有無による電極性能評価を行い,本試験の優位性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も予定の研究費の範囲で,新たな高額設備を導入することなく既存の装置を活用しながら材料開発を行う。 主たる研究設備として,凍結乾燥器(ペーパー化処理),恒温乾燥器(ヨウ素前処理),加熱炉(炭素化処理~1000 oC),吸着測定装置(表面/細孔特性の評価)が既に揃っており,基本的な材料調製及び特性評価はスムーズに行える環境にある。但し,試料合成及び電極特性評価には,高純度ガス(G1クラス)や金属類をはじめとした高価な原料が必要となる他,細孔評価用の液体窒素,加熱処理用の石英機器類等が必要不可欠なことから,消耗品費として研究経費の大半をこれらに充てる。 産総研では,引き続き透過型電子顕微鏡,電気化学測定装置の実験を担当するが,運営費交付金ではまかなえない専用の運転資金があることが研究の加速上必要なため,少額の消耗品費を配分する予定である。その他,炭素体の構造評価に有用な解析装置は山梨大学機器分析センター内に揃っており,研究費の1部はこれらの使用料とする。 また最新の動向調査のため,国内での情報収集と成果発表を予定しており,そのための旅費及び研究打ち合わせとして,主たる研究者2名の旅費を計上する。
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