研究課題
本研究では,ナノ構造材料の創製や短波長域の分光学において開発が切望されている全固体型超短パルス深紫外レーザーの開発を最終目的として,系統的にマトリクス組成を変化させた Pr3+ ドープガラスを調製し,Pr3+の深紫外蛍光強度とガラス組成の関係を明らかにし,最適ガラス組成 を決定するとともに,Pr3+の深紫外蛍光機構を解明する基礎的研究を行う.さらに,最適化したPr3+ドープガラス組成について,実用化へ向けたレーザー特性の評価を行う. 今年度においては,Pr3+の深紫外蛍光強度に及ぼすマトリクス効果の解明について,研究を行った.その結果,マトリクスガラスとしてフツリン酸塩系ガラスが非常に有望であることを見出した. さらに,このマトリクスガラスにNd3+をドープしたところ,真空紫外蛍光を示した.申請者らの知る限り,ガラスにドープした希土類イオンからの深紫外蛍光に関する報告は初めてである.
2: おおむね順調に進展している
今年度では,Pr3+の深紫外蛍光強度に及ぼすマトリクス効果を明らかにすることで,マトリクスガラスとして有望な組成選択が可能となった.さらに,このマトリクスガラス特有の材料設計に対する自由度の高さから,真空紫外蛍光を示す希土類イオンドープガラスの開発に成功している.
前年度の研究成果に基づいて,Pr3+の深紫外蛍光強度が最も高い組成, 深紫外/可視蛍光強度比が同程度となる組成,および深紫外蛍光を全く示さない組成を代表試料に選抜し,詳細な測定/解析を行う. 真空紫外(VUV)透過スペクトル測定装置を用いて,マトリクスガラスの紫外吸収端から伝導帯の底を見積もる.また,Pr3+を極力低濃度ドープしたガラス試料を調製し,同様に VUV 透過スペクトルを測定し,4f5d および 1S0 の吸収帯を決定する.透過スペ クトルとPr3+深紫外蛍光の励起スペクトルも比較検討する.VUV 透過スペクトルおよび蛍光・励起スペクトルのピーク位置を詳細に考察し,それぞれのマトリクスガラスにドープしたPr3+のエネルギー準位を確定する.さらに,レーザー特性評価システムを用いて詳細な蛍光寿命測定を行う.それぞれの Pr3+ドープガラスの深紫外/可視域の蛍光ピークに対する蛍光寿命を励起波長依存性も含め詳細に測定する.吸収と蛍光ピークの実験データに基づいたエネルギー準位と蛍光寿命の結果を総合して,Pr3+の深紫外蛍光機構を解明する.特に,マトリクスガラスの伝導帯の底とPr3+の4f5d 準位および 1S0 準位の相互エネルギー差の関係が Pr3+ の深紫外蛍光強度ならびに深紫外/可視蛍光強度比に与える影響をガラス組成と関連づけて考察する.
予算全体の6割をガラス調製に関する消耗品の購入に,成果発表・打合せ・実験・情報収集などに関する旅費に4割を充当する.
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