研究課題/領域番号 |
23560805
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
西出 利一 日本大学, 工学部, 教授 (30297783)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | Petal Effect / ハフニア / 集水膜 / 超親水性 / スクリーン印刷 |
研究概要 |
今年度は、(1)Petal Effect膜とあわせて使用する超親水膜の開発、(2)Petal Effectハフニア薄膜の集水性の検討、(3)低粘度ハフニアゾルを用いたスクリーン印刷法の開発、(4)スクリーン印刷によるストライプパターン膜の作製、を研究した。超親水膜は、アルミナ薄膜をニトリロトリス(メチレンホスホン酸)を用いて水熱処理して作製した。この薄膜は水に対する接触角が約10°であり超親水性を示す。これを沸騰水で加熱すると、接触角はほとんど変化しないが、薄膜の形態が鋸歯状から平坦膜に変化した。平坦膜は耐久性が良好になり、この形態変化を応用すると高耐久性超親水膜が得られることが期待される。Petal Effectハフニア薄膜の水蒸気下での集水性を調べた。設置角度を変えたハフニア薄膜上の集水量を調べ、最適設置角度を求めた。その結果、設置角度が水平方向から30°と60°、垂直方向から15°と30°のとき、良好に水滴を捕集することが分かった。これは集水装置を開発するときの指針を与える。撥水―Petal Effectストライプパターン膜をスクリーン印刷法で作製し、それを集水膜として応用する計画である。そのため、本研究では低粘度ハフニアゾルを用いたスクリーン印刷法を新たに開発した。すなわち、i)ハフニアゾルにテフロンまたはハフニアゲル粒子を含有させて、粒子含有ハフニアゾルを開発した。ハフニアゲル粒子は、グリコール酸を含むハフニアゾル作製の反応条件を変えて作製し、それをハフニアゾル中に安定に存在させることに成功した。次に、ii)ゾルの溶媒を良好に吸収する下地膜を開発した。2000nm長のナノファーバー状アルミナゾルによる下地膜は、ハフニアゾルの溶媒を良好に吸収した。これらの技術を組み合わせて、下地膜上にハフニアストライプパターン膜(パターン幅1mm)を、スクリーン印刷で作製することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展している。集水装置を作製するためには、(1)良好な集水膜の開発、(2)集水装置内における集水膜の設置条件の検討、が必要である。(1)集水膜では、膜単体としてはi)Petal Effect膜、ii)Petal Effect膜とあわせて用いる超親水膜、iii)撥水膜、の作製条件の検討が必要である。また、集水膜の形態として、i)Petal Effect+超親水―撥水複合膜、ii)Petal Effect+超親水―撥水複合パターン膜、の作製条件の検討およびそれらの集水性の検討が必要である。また、(2)集水膜の適切な設置角度を決定しなければ、集水装置内の集水膜設置条件を求めることができない。本研究では、(1)集水膜の検討として、当初計画では、Petal Effectを示すハフニア薄膜の作製条件を検討する予定であった。しかし、予備実験の結果、良好な効果を予想できなかったので、超親水膜と撥水膜の研究を優先させ、それぞれ良好な膜を作製することに成功した。集水膜の形態では、Petal Effect―撥水ストライプパターン膜が、予備実験の結果最も集水性に優れると予想されたので、当初計画(矩形パターンを計画していた)を変更して、この作製条件をまず検討した。低粘度ハフニアゾルをスクリーン印刷用インキとして用いるため、ゾルに粒子を添加して流動性を低減させ、ゾルの溶媒を吸収する下地膜を設置した。これらによりストライプパターンの作製に成功した。また、Petal Effectハフニア薄膜の集水性を水蒸気下にハフニア薄膜の設置角度を変化させて検討し、適切な設置角度を見いだすことができた。以上のとおりほぼ研究目標に近い成果を上げることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、Petal Effect―撥水、超親水―撥水およびPetal Effect+超親水-撥水ストライプパターン膜を作製し、集水性能を調べる。このとき、集水膜の設置角度は、昨年度の成果で得られた角度(水平方向から30°および60°、垂直方向から15°および30°)とする。低粘度ゾルをスクリーン印刷用インキとして用いるには、粒子添加Petal Effectハフニアゾルが有効であることをすでに見いだしている。ゾルの安定性とスクリーン印刷適性をより良好にするため、今年度はナノサイズシリカ粒子をPetal Effectハフニアゾルに添加して検討を続ける。シリカ粒子の粒径や添加量に対するゾルの安定性とスクリーン印刷性を調べる。高粘度ゾルが得られれば良好なスクリーン印刷性を達成できると期待される。水溶液プロセスによるチタニアゾルは、他のゾルと比較すると高粘度である。このゾルの作製条件を検討することにより、スクリーン印刷性に優れたチタニアゾルが期待される。チタニアは光照射により超親水性を発現するので、Petal Effectハフニア薄膜とあわせて用いる超親水膜としての使用が期待される。ストライプパターンは、これまで1mm幅のみを検討してきた。集水性能を評価するとき、集水性を目視で観察していると、撥水パターンが相対的に大きく、Petal Effectパターンが小さくすると、より集水性が向上すると考えられる。そこで、パターン幅を、撥水パターンでは1~2mmとし、Petal Effectパターンでは1~0.5mmとして検討する。この組み合わせの中から良好な集水性を示すパターンを求める。ストライプパターンの検討後、矩形パターンを検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、経費を主に消耗品、外注費および旅費として使用する。消耗品は、集水膜作製に必要なストライプや矩形パターンマスク(含むパターン幅の変更)、試薬(グリコールなどの試薬やエタノールなどの溶媒)や印刷用ガラス基板などである。外注費は、試料のFE-SEM観察、TPD解析やXPS解析に使用する。XPS解析は外部の分析専門機関に依頼する。旅費は、研究成果の学会発表や研究打ち合わせに使用する。
|