本年度は親水―撥水パターン膜およびPetal Effect膜(グリコール酸を含むハフニア薄膜)の集水プロセスを、ビデオおよび写真撮影しその画像を解析して、集水プロセス(特に初期プロセス)を詳細に調べた。 集水プロセスはそれぞれの膜に特徴的な挙動を示した。すなわち、パターン膜は、親水パターン上で測定開始後約4分から水滴が観測され、Petal Effect膜では約9分で水滴が観測された。それに対して、撥水膜は約19分から水滴が観測されたが、水滴の成長は上の2試料よりたいへん遅い。試料上の水滴数はPetal Effect膜が最も多く、水滴の体積は、パターン膜およびPetal Effect膜が大きい。以上の結果より、パターン膜およびPetal Effect膜は測定の初期から水滴が形成され、それが時間とともにすみやかに成長することにより、良好な集水性を示すことが分かった。これらの膜で初期から水滴が形成されるのは、撥水表面にある多量の水蒸気がすみやかに親水パターンや親水点(Petal Effectの特徴的な表面構造)に移動し、あるポイントに集合し、そこで水滴が形成されることによると考えられる。 本年度はさらにシスチンを含むハフニア薄膜を作製し、それのPetal Effectに対する効果を調べた。シスチンは親水基であるCOOH基と疎水性である-S-S-基を含むが、疎水性基のPetal Effectへの影響は興味深い。ガラス基板上に作製したハフニア薄膜(シスチン)の外観は無色透明膜であった。ラマンスペクトルからシスチンが膜内に存在していることが分かった。水に関する物性(接触角、転落角および水滴保持量)は、それぞれ82°、32°および21μLであり、この薄膜はPetal Effectを示すことが明らかになった。従って、疎水性基の存在はPetal Effectの発現に影響しないことが分かった。
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