研究実績の概要 |
窒化物蛍光体は優れた発光特性や熱安定性が持ち、青色LEDと組み合わせて固体照明への応用として注目されている。一方、蛍光体の結晶構造及び化学組成は、温度特性に大きな影響を与えると考えられている。本研究には、既存の窒化物蛍光体に対し、温度特性における結晶構造および化学組成の影響を調べ、温度消光メカニズムを解明することを目的とする。さらに、バンドギャップエンジニアリングや組成制御など手法を活用し、窒化物蛍光体の耐久性の向上を図る。今年度の研究実績の概要は以下の通りである。 1)水蒸気雰囲気下における(Sr,Ca)AlSiN3:Euの熱劣化とそのメカニズム。蛍光体を水蒸気雰囲気下に100-200oC・8-100時間で放置し、熱安定性を調べた。蛍光体の劣化は150oCで開始し、その後蛍光強度が急に落ちてしまい、蛍光体粉体が白くになった。さらに、酸化により蛍光体の微構造や相純度が明らかに変化し、蛍光体は最終的に分解した。表面分析及び微細構造解析など技術を用いることによって、劣化メカニズムを明らかにしたとホストと二価のEuの両方の水分増強酸化により酸化剤ガスの浸透機構を介して起こることを提案した。 2)カーボン固溶によるSr2Si5N8:Eu赤色蛍光体の熱劣化の改善。カーボン添加したSr2Si5N8:Euを高温合成し、発光強度及び温度特性を調査した。従来には熱劣化を起こしたSr2Si5N8:Euはカーボンの固溶によって、昇温または冷却時の発光強度が一致になり、熱劣化が減少した(16%から0%に)。その結果は、固溶により蛍光体ホストの共有結合性が増加しながら結晶の剛性を増大することに関連していると考える。一方、カーボン添加したSr2Si5N8:Euの発光強度も増加した。
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