研究課題/領域番号 |
23560812
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
打越 哲郎 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (90354216)
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研究分担者 |
鈴木 達 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (50267407)
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キーワード | ヘマタイト / ゲーサイト / 強磁場 / 配向 / コロイドプロセス / 異方性 |
研究概要 |
ヘマタイトはコランダム構造を有し、その物性には結晶構造の異方性に起因した異方性の出現が報告されている。結晶をある方位に優先配向させたヘマタイトでは、レアアースなどを添加せずに諸特性の改善が期待できる。しかし、従前のヘマタイトの異方性研究は、不純物の多い単結晶や小さな薄膜試料を用いて行なわれており、実用化に必要なサイズの配向バルク体での特性研究は殆どない。そこで、ゲーサイトを出発原料とする強磁場コロイドプロセスにより、優先配向方位の異なる配向ヘマタイトバルク体を作製し、その異方特性を評価して、配向ヘマタイトの実用材への応用の可能性を探索することを目的とする。 H24年度は、鋳込み成形法または電気泳動堆積法を用いて作製したゲーサイト固化成形体を熱処理して、配向方位の制御されたヘマタイトバルク配向体を作製し、作製された配向ヘマタイトの磁気特性を試料振動型磁力計(VSM)による磁化曲線(M-H曲線)測定により、また結晶配向面における摩擦摩耗試験をボールオンディスク・ピンオンディスク型摩擦摩耗試験により評価した。磁気特性測定により、このヘマタイトはc軸方向に対し、既に実用化されているMn-Znフェライト材料に匹敵する優れた軟磁気特性を示すことが示された。また、特に磁気ヘッド材料などへの利用において重要な摩擦摩耗特性については、軟磁気特性的に有効な配向方位で低摩耗特性を示すという好結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究で、本プロセスにより作製される配向へマタイトの異方性は、ゲーサイト配向成形体の熱処理に伴い大きく上昇し、1200℃の熱処理でXRD評価によるLotgering factor 1.0の高配向に達すること、また、磁気的異方性も配向度の上昇に伴って大きくなることが確認できた。また、ゲーサイト配向成形体の作製方法として強磁場電気泳動法を用いることにより、摩耗試験に適した配向面の制御されたヘマタイト配向体が容易に作製できた。しかし、ロッド状ゲーサイト粒子の長軸が一方向に並ぶ方向で作製した固化成形体では、乾燥過程で短冊状にひび割れを生じやすく、曲げ試験に適した大きな試料の作製が困難である問題については、原料のゲーサイト粒子の形状異方性を小さくすることでも解決できると考えられた。そこで、本年度は、形状異方性が小さなゲーサイト粒子の湿式合成についても検討を進めることとした。今までのところ、アスペクト比が小さな粒子の生成条件では結晶性が低下する問題が新たに生じ、磁場配向プロセスに適したゲーサイト原料粒子の合成についての大きな進捗はない。この件については今後も検討を続ける予定である。比較的小さな試料で測定が可能な磁気特性および摩耗特性試験については、おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
試料の電気的特性を、ソースメータを用いた直流4 端子法による電気伝導度測定、およびゼーベック係数測定により評価する。ヘマタイトの電気的特性に配向方位依存性があることは過去にも報告があり、不純物や欠陥によることが原因とされている。(例えば、Santilli et al., J. Mater. Sci. 28, 6029 (1993))本研究では、TiO2 もしくはSiO2 のドープが電気的特性の異方性に及ぼす影響についても検討する。これら元素のドープは、ゾルゲル法によりゲーサイト表面を予め修飾した後、固化成形するプロセスにより行なう。光電気化学的特性の評価は、比較的面積の大きな配向自立膜を用い、キセノンランプ光照射下での光電流変化を電気化学的手法により測定し、配向面と光電気化学的特性との関連性を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
主として、試薬、理化学用品等の研究消耗品の購入に充当する。光電気化学的特性の評価システムについては、装置本体の自作に必要な部材を購入する。測定系は既存の装置を流用する予定である。機械的特性評価に必要な試験片の加工および機器分析の一部は外部委託することも予定している。また、国内および国際会議の参加費および旅費の支出にも研究費を使用する。
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