研究概要 |
ヘマタイトでは、結晶構造の異方性に起因した物性値の発現が報告されている。しかし、従前の研究は不純物の多い単結晶や小さな薄膜試料を用いて行なわれており、配向バルク体での特性研究は殆どなかった。そこで、ゲーサイトを出発原料とする強磁場コロイドプロセスにより、優先配向方位の異なる配向ヘマタイトバルク体を作製し、その異方特性を評価することを目的とした。結晶性が高くアスペクト比の小さな市販のゲーサイト粒子を出発原料とし、溶媒+分散剤+バインダーが超純水+氷酢酸+PVAの組み合わせで得られた作製したスラリーを0~12Tの強磁場中で鋳込み成形または電気泳動堆積により固化成形したところ、2~6.5Tの磁場印加でc軸が磁場に垂直に配向したゲーサイト成形体が得られた。このゲーサイト配向成形体を熱処理することで、ゲーサイトのa,b軸がヘマタイトのc軸に引き継がれた高配向ヘマタイトバルク体を作製できた。作製された配向ヘマタイトの磁気特性を試料振動型磁力計(VSM)による磁化曲線(M-H曲線)測定したところ、このヘマタイトはc軸方向に対し、既に実用化されているMn-Znフェライト材料に匹敵する優れた軟磁気特性を示すことが示された。また結晶配向面における摩擦摩耗試験を評価したところab面配向方位で低摩耗特性を示す結果が得られた。純粋なヘマタイト、およびゾルゲル法によりゲーサイト表面にチタニア修飾し固化成形後に焼成するプロセスで作製したTiO2ドープヘマタイトについて、配向体を作製し4端子法で電気伝導度を測定したが、室温~300℃では配向方位に依存した優位な差は認められなかった。比較的面積の大きな配向自立膜を用い、キセノンランプ光照射下での光電流変化を電気化学的手法により測定し、配向面と光電気化学的特性との関連性を評価した結果、光電極としての作動は確認されたが、配向面による優位な差は認められなかった。
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