本研究は、複合熱電材料に多く存在する半導体/半導体界面を対象として、単一界面の熱伝達率の測定手法を確立する。実験と分子動力学シミュレーションの2方面からのアプローチにより界面熱伝導のメカニズムおよび界面付近の結晶構造や、粒子サイズ、ラフ ネスなどの影響を解明する。さらに、その結果に基づいて、Ge/Si界面を対象として、成膜条件を精確にコントロールすることにより界面熱伝達率の高度制御を実現する。 H25年度では、スパッタ成膜によりSi(Ge)単結晶基板の上に成膜したGe(Si)のアモルファス・多結晶薄膜を用いて、Ge(Si)薄膜の面外方向の熱伝導率、およびSi/Geの界面熱抵抗を測定した。アモルファスGeとSi薄膜では、膜厚が100nm以上になっても、熱伝導率が膜厚の増加により増加することが観察された。それは、アモルファスのGeとSi薄膜において、平均自由行程が100nm以上のフォノンが存在することを示す。また、Si/Geの界面熱抵抗に関しては、界面の結晶状態やラフネス等に強く依存することが分かった。 更に、分子動力学シミュレーションを用いて、Si/Geの理想界面、空孔を含む界面、および原子拡散のある界面に対して、界面のフォノンDOSと緩和時間を解析し、界面熱抵抗を計算した。界面では、両側材料のフォノンDOSのシフトにより、共通の周波数領域を拡大し、界面熱抵抗を低減できることを証明した。また、界面では、すべてのフォノンが散乱されるのではなく、低周波数のフォノンが散乱されずに界面を通過できることも分かった。それらの結果は、将来、界面フォノンDOSの制御により、界面熱抵抗を制御する可能性と方向性を示している。
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