研究課題/領域番号 |
23560814
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研究機関 | 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
荒井 康智 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 主任研究員 (90371145)
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研究分担者 |
伊藤 恵司 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (80324713)
丸山 健二 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (40240767)
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キーワード | 国際情報交流 |
研究概要 |
希土類チタン及びニオブ酸ガラス(Ln2O3-TiO2,Ln2O3-Nb2O5)について無容器法でガラスを合成した.課題であったガラス中の希土類と酸素の相関を得る為に,前年EXAFSを実施したが,実験手段の特徴から,希土類と酸素の配位数に±2程度の大きな誤差が生じ,計算した屈折率も0.05程度の差が発生したため,本年度はEXAFSより直接的に希土類-酸素の相関が得られる可能性のある中性子回折実験に注力した.中性子回折実験はJ-PARC NOVAスぺクトロメーターで24時間のマシンタイムを獲得した.この実験では,ガラス中の希土類金属-酸素の相関についてより正確に測定を進める為,Sm-Ti-O系ガラスに集中して実験を実施した.この系を選択した理由は,安定同位体の154Smと152Smの酸化物の散乱因子が正負両方を示し,組成を選択すればSmの中性子散乱因子が合計ゼロになること,及びチタンの安定同位体である46TiとnatTiの酸化物を利用することでTiの中性子散乱因子も合計でゼロにすることができる,大きなメリットがある為である.この散乱因子ゼロは相当する金属-酸素の相関が測定データから消滅する事を意味しており,Tiの因子をゼロにすれば,Sm-O相関のみが実験的に得られる事になる.実験では,Tiの散乱因子をゼロに調整した154Sm(46-nat)TiO,及び152Sm(nut)TiOについて集中的に測定した.特に前者のガラス組成については,非常にクリアな測定結果が得られており,十分解析に耐えるものであった.後者のガラスでは,152Smの散乱因子が複雑である為,解析の検討を進めているところである.なお,これらの結果は2013年7月に開催される,国際学会のNCM12に申請した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中性子回折実験の結果から,長年の課題であった希土類-酸素の相関が直接的に観察できる可能性が高くなった.これまでの推定からの計算よりも依り正確な屈折率計算が可能になる事が十分期待される.
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今後の研究の推進方策 |
中性子回折実験を活用してガラス中の希土類ー酸素相関を直接的に抜き出す実験および解析を引き続き実施する.中性子回折実験は,J-PARCのNOVA及び英国ラザフォードアップルトン研究所のGEM装置に実験提案し,積み残しの課題である,Smの散乱因子をゼロにしたガラスの構造解析を実施する予定である.また,前述したチタン-希土類酸化物系のみではなく,ニオブ系にも範囲を広げて,希土類(サマリウム)ー酸素の相関を得る予定である.これらの希土類-酸素の相関を直接得る手法により,これまでの課題であった部分モル体積の計算方法も指針が得られると考えられる.昨年迄に実施した,希土類ニオブ系ガラスについては特定の組成で注目すべき結果が得られており,今後更に研究を進める必要があるが,これまでにSm-Nb-Oガラスは合成されておらず,中性子実験利用のメリットからも本組成のガラス合成には注力したい.これまで結果から,本提案の最終目的である,モデルを必要としない屈折率計算方法を提案する予定である.特に,Ti系及びニオブ系についてはデータの蓄積もあり,希土類や一部のアルカリ土類元素に限定されるかもしれないが,データベースの構築も検討したい.
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次年度の研究費の使用計画 |
・ガラス製作の為の安定同位体購入 ・ガラス製作の為のノズルなど実験消耗品調達 ・成果報告の為の学会出張
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