研究期間を通じて、特に希土類酸化チタン系ガラスのうち最も屈折率の高い、SmTiOのガラス構造に焦点を絞り中性子実験を実施した。この系は、SmとTi共に散乱長さが正負の同位体が存在することから、X線測定結果を合わせると、ガラス中の6個の部分構造因子の完全分離が可能になるからである。これは、屈折率計算を実施する際に重要となる、従来の金属酸素間距離および配位数が仮定なしで実験的導出可能であることを意味する。また、新規高屈折率ガラスとして、Nd-Nb-O系ガラスを発見し、本年度英国ラザフォードアップルトン研究所の中性子回折実験機会を獲得し、酸化ニオブ系ガラスも合わせて実験を実施した。Sm-Ti-O系の詳細解析結果は現在実施中であるが、Ti-O距離は1.9Aであり、希土類イオンのLa、Nd、Smについて同じ結合距離であった。一方で、配位数はSm系では5以下となり、希土類イオン半径の減少とともに減少していく傾向にあることが判明した。希土類イオンでは、Ln-O配位数がLaの9からSmの8まで結合距離は減少し、結合距離も同様であった。また、構造的な特徴としてLa-Smチタン系ガラスにはS(Q)の1.1A-1付近にプレピークが観察された。動径分布関数には、4オングストローム付近にピークが観察されている。これは、SiO2ガラスで観察されるO-O相関とほぼ同じ距離であり、Ti-O系ガラスでは未知の構造である。Sm-Ti-Oガラスの部分動径関数分布解析結果から詳細が判明す。これまでのガラス構造解析結果から判断すると、チタン系ガラスの屈折率が高い要因としては、アモルファスで議論されていた結晶ルチル構造を残しているのではなく、結晶では見られない新しい歪んだTi-O局所構造があり、それらが密にパックされている可能性があることが分かった。
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