研究課題/領域番号 |
23560817
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
斎藤 光浩 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (00510546)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 量子細線 / 電子顕微鏡 / 転位 / 結晶界面 |
研究概要 |
量子細線や量子ドットなどの低次元量子構造は、バルクとは完全に異なる物性を所有することから古くから注目されている。我々は半導体や絶縁体などの結晶内部に導電性量子細線を形成させる媒体として、結晶の線欠陥、すなわち「転位」に注目する。転位は、結晶中の原子配列が不連続になった線欠陥であり、その周囲に生じる弾性ひずみ場においては、ひずみ緩和のためにしばしば溶質元素の偏析が起こる(コットレル効果)。また、弾性ひずみ場では、溶質元素の拡散速度が完全結晶領域と比べて速くなる(パイプ拡散)ことが知られている。このような転位特有の性質を利用して、添加元素を転位に沿って拡散させて転位芯近傍に偏析させることができれば、溶質元素を1次元的に配列した量子細線構造を創出することが期待される。絶縁体結晶内部に量子細線を形成させる媒体として、転位を提案した。 転位を1次元的に配列させる条件を最適化した。転位導入法は、バイクリスタル法を用いた。酸化マグネシウム(MgO)のΣ5(310)[001]対称傾角粒界をモデル系として、球面収差補正走査透過型電子顕微鏡(STEM)を駆使して、結晶粒界近傍における形成される微細構造を原子レベルで観察及した。 高角環状暗視野(HAADF)像と原子分解EELSマッピングより、極微量の不純物であるカルシウム(Ca)原子とチタン(Ti)原子が同時に結晶粒界に偏析し、原子スケールで規則配列した自然には存在しない三次元構造(超構造)を形成していることが観察された。 セラミックス粒界における極微量の残留不純物が、規則的な超構造を自己組織化し、物性に大きく影響することがわかった。このような自己組織化メカニズムを積極的に活用することで、量子細線の自己形成や原子レベルでの不純物制御によるセラミックス材料の高性能化が期待されるだけでなく、量産面などのエンジニアリングの観点でも応用が可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
絶縁体結晶内部に量子細線を形成させる媒体として、転位を提案した。転位を1次元的に配列させる条件を最適化した。転位導入法は、(1)高温圧縮変形法、(2)バイクリスタル法、(3)配向薄膜粒界を予定していた。しかしながら、(1)高温圧縮変形法による転位導入は困難を極めたため、中止している。現在、(2)のバイクリスタル法を用いて成功した。
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今後の研究の推進方策 |
成功しているバイクリスタル法をさらに活用して導電性細線の配列を試みる。様々な小傾角粒界や安定なΣ粒界が形成すると予測される接合結晶方位関係を用いる。直線的な転位配列が形成されているか、汎用透過型電子顕微鏡の暗視野像で評価する。 さらに、転位を直立させるような方向で、約10μmまで機械研磨された後、イオンミリング処理によってさらに薄片化を行い、転位が貫通している状態で、試料表面に金属を蒸着する。Ar雰囲気下での熱処理で金属を転位に沿ってパイプ拡散させ、導電性量子細線を形成させる。 第一原理計算に基づく、電子状態計算、電子輸送特性のシミュレーションにより、導電性量子細線の電流輸送機構の本質を解明する。計算の中で金属を変更して物性の改善を予測する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に主な経費として使用するものは、実験のための経費、成果報告の旅費、論文投稿料に分けられる。引き続き、多くの方位で高温拡散接合に挑戦するため、単結晶ブロック(計1,000千円)が必要である。その他、高純度金属(計650千円)や国際会議での成果報告のための渡航費(300千円)、論文投稿料(100千円)などを計上する。
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