研究課題/領域番号 |
23560817
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
斎藤 光浩 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (00510546)
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キーワード | 量子細線 / 電子顕微鏡 / 転位 / 結晶界面 |
研究概要 |
セラミックス焼結体は、電子回路の基板、プラグなど自動車部品、電子材料のコンデンサーやバリスター、碍子など、様々な用途で使用されている。その諸特性は粒界における格子整合性と密接に関係すると考えられているが、その詳細は不明である。そのため、粒界諸特性の発現挙動が遷移する対応方位関係(Σ粒界)から僅かに傾角させたNear-Σ粒界について、粒界局所構造を詳細に調べる必要がある。 高純度(99.9%)酸化マグネシウム(MgO)のΣ5(310)[001]対応粒界(Σ粒界)および対応方位関係から僅かに傾角させたNear-Σ粒界をモデル系として比較する。汎用型透過型電子顕微鏡(CTEM)、球面収差補正走査透過型電子顕微鏡(STEM)と第一原理計算を駆使して、残留不純物が偏析しやすい結晶粒界近傍における極微量不純物の所在と形成される微細構造を原子レベルで観察、さらに安定構造をシミュレーションした。 Σ粒界について、高角環状暗視野(HAADF)像と原子分解EELSマッピングより、極微量の不純物であるカルシウム(Ca)原子とチタン(Ti)原子が同時に結晶粒界に偏析し、原子スケールで規則配列した自然には存在しない三次元構造(超構造)を形成していることが観察された。さらに理論計算によると、それらが複数の欠陥や電荷と強く結びついて、複雑な安定構造及び特有の電子状態を形成していることが明らかにされた。Near-Σ粒界の暗視野像では、等間隔で配列する直線状の刃状転位に起因するコントラストが観察された。対応方位関係からの僅かなずれによるミスマッチを補正するために、バーガースベクトルが非常に小さいDisplacement Shift Complete (DSC) 転位を導入して、ミスマッチ領域を局在化していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
絶縁体結晶内部に量子細線を形成させる媒体として、転位を提案した。転位を1次元的に配列させる条件を最適化した。転位導入法は、(1)高温圧縮変形法、(2)バイクリスタル法、(3)配向薄膜粒界を予定していた。しかしながら、(1)高温圧縮変形法による転位導入は困難を極めたため、中止している。現在、引き続き、(2)のバイクリスタル法を用いて成功している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、成功しているバイクリスタル法をさらに活用して導電性細線の配列を試みる。様々な小傾角粒界や安定なΣ粒界が形成すると予測される接合結晶方位関係を用いる。直線的な転位配列が形成されているか、汎用透過型電子顕微鏡の暗視野像で評価する。 さらに、転位を直立させるような方向で、約10μmまで機械研磨された後、イオンミリング処理によってさらに薄片化を行い、転位が貫通している状態で、試料表面に金属を蒸着する。Ar雰囲気下での熱処理で金属を転位に沿ってパイプ拡散させ、導電性量子細線を形成させる。第一原理計算に基づく、電子状態計算、電子輸送特性のシミュレーションにより、導電性量子細線の電流輸送機構の本質を解明する。計算の中で金属を変更して物性の改善を予測する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に主な経費として使用するものは、成果報告の旅費、論文投稿料に分けられる。国際会議での成果報告のための渡航費、論文投稿料などを計上する。
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