研究課題/領域番号 |
23560822
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
杉野 卓司 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (50357266)
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研究分担者 |
清原 健司 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (30344188)
安積 欣志 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 研究グループ長 (10184136)
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キーワード | カーボンナノチューブ / イオン液体 / アクチュエータ / 導電性添加物 / メカニズム |
研究概要 |
本研究課題では、カーボンナノチューブとイオン液体および支持高分子からなる電極膜の伸縮現象を利用したアクチュエータの高機能化を目的として研究を進めている。今年度は、電極膜中あるいは電解質膜中のイオン液体濃度を調整することにより、素子中のイオン液体濃度の異なるアクチュエータ素子を作成し、その変形応答特性を調べることで変形応答メカニズムの解明を試みた。 これまで、交流電圧を印加することによりアクチュエータの変形応答を調べていたが、印加電圧の周波数が遅くなってくる(0.1Hz以下)と、初期的に正極側に屈曲変形した素子が次第に電圧印加前の原点方向に戻ってくる現象が見られた。さらに、この現象を調べる為に直流電圧(DC2V)をアクチュエータに長時間印加して、その変位変化を調べたところ、初期的に正極側に変形した後、電圧印加前の原点を通り越して反対側(負極側)に変形してしまう現象が見られた。そこで、アクチュエータの電極膜層あるいは電解質膜層に含まれるイオン液体量を調整して変形応答を詳細に調べた。その結果、電解質膜および電極膜中のイオン液体量を減らすことにより、変位の戻り現象及び逆方向への変位が抑制できることが明らかになった。中でも電極膜中のイオン濃度を極めて低濃度にした場合、順方向(正極側)の変形応答より、逆方向(負極側)の変形応答が優先することが明らかになった。これらの結果から、アニオンの移動が変位の戻り現象(逆方向への変位)を誘起していることが示唆された。本結果を検証するために、用いるイオン液体のカチオン部位は同じものを使用し、アニオン部位のサイズがより大きなイオン液体を用いて、同様にDC2Vで変形応答を調べたところ、より大きなアニオンを用いた場合の方が、より速く、順方向から原点に戻り、逆方向により大きく変形することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はアクチュエータの変形応答を更に改善させるために、主に変形のメカニズムに重点を置いて研究を行った。その結果、電圧印加に伴うアニオン移動が変形の戻り現象を誘起していることを明らかにした。また、電極膜中あるいは電解質膜中のイオン液体量を調整することにより変形の戻り現象を抑制することに成功した。添加物によるアクチュエータ性能の改善及びメカニズム解析の成果を国内外の学会およびシンポジウムで発表した(3件)。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は電極薄膜の積層化による性能の向上を図る。積層化の方法および電圧の印可方法を工夫することにより、性能のさらなる向上を目指す。また、キャパシタンス測定など電気化学的特性を詳細に調べることにより、今年度明らかになった変形メカニズムの結果と合わせて、さらに詳細なメカニズム解析を行い、モデル化を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度同様、次年度も多くは消耗品の購入に当てる。他の使用計画としては、研究成果の発信ため国内外の学会参加費等に使用する予定である。また、その他の経費として学会誌投稿料、外部の文献複写等に使用する予定である。
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