信頼性の高い耐熱複合材料である、SiC/SiC複合材料を用いたスラスターの研究を進めているが、1700℃以上では著しい減肉が発生してしまい,使用できないことも同時に明らかになった。そこで、本研究ではSiC/SiC複合材料が使用できない温度域で使用可能なセラミックス複合材料の開発を実施した。 平成23年度にはZr、Y、Hfを添加した耐酸化・耐水蒸気マトリックスの創製を実施した。ZrB2とZrCとSiCからなる混相マトリックスを候補材料とした。ZrB2およびZrCの含有量が異なる複合材を試作し、プロセス条件の調整により大きな亀裂が発生しない平板(100 x 100 mm)を製作した。 平成24年度には作製したZrB2、ZrCおよびSiCの3相マトリックスを持つ複合材料平板の酸化試験を実施した。水素/酸素バーナーにより急速に加熱することで、実際のスラスターに近い環境で試験が実施できることを確認した。また,炭素繊維による小型スラスター織物の作製を進めた。治具の製作などにおいてブレーディング機に合わせた試作のやり直しを数回実施し、安定した織物が製作できた。 平成25年度には平板をさらに大きく(200 x 200mm)製作し、機械特性およびバーナーによる酸化試験を実施した。SiCのみの複合材料よりも特性が優れていることが確認できた。スラスターの製作については、準備までは進んだが製作に時間を要したため研究期間中に終了することができなかったため、燃焼試験についても実施できなかった。本研究の推進により混相マトリックスの最適な組成を見いだすことができた。大型の平板の製作において確立できた製作手法は、スラスター形状にも対応可能であることを確認しており、今後のスラスターの製作及び試験に対する技術課題は全て解消できた。
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