近年、携帯電話やポータブルコンピューターなどに代表されるポータブル電子機器の進歩に伴い、その駆動用電源である電池に対しても高エネルギー密度化への要望が高まっており、その中でも特にリチウム二次電池は高エネルギー密度化が最も期待される電池として、各方面で盛しに研究開発が行われている。材料物性研究の分野において、透過型電子顕微鏡(TEM)は構造解析の手法の1つとして欠かせない実験手段となっている。しかしながら、その一方でTEMは、実験条件の最適化とともに、光学原理、回折原理に基づいた橡の正しい解釈の必要性が強く要求されるために、リチウムイオン電池の微細構造の評価において、その威力を十分に発揮できていないのが現状である。 本研究は、高分解能透過型電子顕微鏡(HREM)および分析電子顕微鏡を用いて、薄膜マイクロ電池用LiCoO_2正極材料の微細構造解析を行い、ナノ結晶相や刃状転位の形成機構を明らかにすることによって、微細構造の変化と劣化特性との関係を明らかにするとともに、充放電のメカニズムを微視的に明らかにするための基礎的知見を得ることを目的として行った。 その結果、LiCoO_2薄膜には100-200nmサイズの粒子が存在し、その中に同サイズのCo_3O_4粒子が独立して存在し、(221)配向していることを明らかにした。また、充放電サイクルに伴う微細構造の変化を系統的に調べたところ、100-200nmサイズの粒子が細分化され、5nmサイズのナノ結晶が形成されることを明らかにした。 今回、充放電サイクルに伴い、ナノサイズで微細構造の変化が生じることを明らかにすることができた。今後、より詳細に調べることにより、充放電特性の劣化機構をより詳細に微視的に明らかにすることが期待できる。
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