研究課題/領域番号 |
23560830
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
原 正憲 富山大学, 水素同位体科学研究センター, 准教授 (00334714)
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研究分担者 |
布村 紀男 富山大学, 総合情報基盤センター, 准教授 (10372476)
赤丸 悟士 富山大学, 水素同位体科学研究センター, 助教 (10420324)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 水素吸蔵合金 / 熱力学特性 / 磁化率 / 電子状態計算 / 設計指針 |
研究概要 |
研究の目的は,水素化物の磁性を指標とし水素ハンドリング材(金属製水素透過膜,水素吸蔵合金)の熱力学特性(水素平衡圧力,水素化物生成エンタルピー)を短時間で定量的に求める評価・設計手法を検討し提案することである.このため本研究では,特にPd合金に着目しPd合金水素化物の磁化率の測定とバンド計算を中心に行いすでに得られている熱力学特性と比較し,水素ハンドリング材の評価・設計手法の検討を行う.さらに,得られた結果をもとに高価なPdを含まないZr系水素吸蔵合金についても検討を行う.平成23年度には,研究目的を達成するために次の研究を重点的に行った.1)Pd,Pd-Ag合金とそれら水素化物に対してKKR-CPA法等を用いて電子状態の計算 Pd-Ag合金とその水素化物の電子状態計算を通して,Pd-Ag合金が貯蔵できる水素量を評価する手法の目処を得た.その手法は水素化に伴い上昇するフェルミレベルをdバンドの空準位とあわせて評価するものである.これにより水素吸蔵合金で重要な性能の指標であるプラトー幅が電子状態計算より評価できる.2)Pd,Pd-Ag合金の水素化物生成に伴う磁化率測定 Pd及びPd-Ag合金を水素化させながら,その場で磁化率測定を行う装置の構築を行った.この装置により得られた値は,従来報告されている値と極めてよい一致を示した.得られた磁化率測定は水素濃度に対して直線的に減少し,水素吸収量が飽和するプラトーの終端では磁化率はほぼ消失した.この結果は,電子状態計算結果を説明するものであり,KKR-CPAを用いた電子状態計算がPd,Pd-Ag系に適用できることが明らかとなった.3)ZrMn2合金の水素化物生成の熱力学特性の測定 Pd系合金以外への評価手法の適用性を広げるために,Zr系水素吸蔵合金としてよく知られているZrMn2合金の水素化物生成の熱力学特性を取得した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水素化に伴う磁化率変化を水素雰囲気下でその場測定する装置の構築が終わり,PdおよびPd-Agで得られた磁化率は報告値と極めてよい一致を示した.また,Pd,Pd-Ag合金とそれら水素化物の電子状態計算が終わり,水素吸収量を電子状態計算より評価する手法の目処を得た.
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今後の研究の推進方策 |
AgはPdに比べ原子番号が1つ大きく,Pdへの添加では電子を持ち込む元素である.この合金系に対して,Pd-Co,-Rh,-Irでは電子を少なくする元素である.これら元素を添加した合金の磁化率測定と電子状態計算を当初計画に従い行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでに,測定装置及び電子状態の計算環境は構築されており,物品の購入はない.一方,測定に伴う消耗品,電子部品の購入と成果報告を行うための旅費に使用する.
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