研究課題/領域番号 |
23560835
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
陳 中春 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00282111)
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キーワード | 複合材料 / セラミックス / アルミナ / 反応焼結 / In situ合成 / 組織靱化 / 破壊靱性 |
研究概要 |
本年度では、反応焼結で合成したアルミナ基複合材料におけるBa-β-Al2O3棒状粒子の結晶方位、マトリックスとの界面関係、ZrO2のマルテンサイト相変態に及ぼすTZP(正方晶ジルコニア多結晶体)添加の影響、複合材料の熱安定性等を調べるとともに、最適な機械的性質を引き出すための材料の組成設計、プロセッシング条件、組織制御について検討した。得られた成果を以下に示す。 1. Ba-β-Al2O3棒状相は、Baイオンが基底面に沿って優先的に拡散して成長したと考えられる。一方、BaがAl2O3に向かって長距離拡散の結果、棒状Ba-β-Al2O3相が生成するとともに、最初のBaZrO3の所でZrO2として残存する。 2. TEMで組織観察および方位解析の結果、Ba-β-Al2O3の長軸方向は<10-10>であり、 Al2O3マトリックスとの界面はBa-β-Al2O3の基底面(0001)に平行することが分かった。 3. TZPの添加は複合材料の緻密化を促進させ、また、反応焼結により生成した単斜晶相ZrO2のほとんどは正方晶相に準安定化した。したがって、TZPを添加した複合材料の破壊靱性値は、クラックの偏向や架橋の効果だけでなく、ZrO2のマルテンサイト相変態の効果によりTZP無添加試料よりも高い値を示した。特に1600℃で焼結した複合材料の破壊靱性値は、アルミナの約2.4倍の値に達した。 4. TZPの添加によりアルミナマトリックスの結晶粒径はさらに微細化になった。例えば,1600℃で焼結してもサブミクロンの微細組織を有する。 5. Al2O3とBaZrO3の混合粉末から反応焼結により合成したアルミナ基複合材料は、高温で長時間熱暴露試験を行った結果、1400℃まで相や組織は安定であること分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、反応焼結により合成した複合材料に対して、最適な機械的性質を引き出すための材料の組成設計、プロセッシング条件、組織制御について重点的に検討した。特に、正方晶ジルコニア多結晶体(TZP)の添加によって、複合材料の緻密化が促進され、マトリックスの結晶粒径が微細化になるとともに、破壊靱性が大きく向上した。よって、高性能アルミナ基酸化物/酸化物複合材料のIn-situ合成プロセスの確立に一歩前進した。本年度の研究の目的を達成し、研究計画を順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成23と24年度の研究成果を踏まえ、今後、複合材料の組織や機械的性質に及ぼすイットリア添加の影響を検討するとともに、Al2O3とBaCO3混合粉末の反応によるBa-β-Al2O3強化したAl2O3基複合材料の合成・組織制御および機械的性質を調べる。また、Ba以外のアルカリ金属、アルカリ土類および希土類金属(例えば、Ca、Sr、La)の化合物を用い、Al2O3粉末との反応焼結により複合材料の合成を試み、本研究で提案しているIn-situ合成プロセスの有効性および波及効果を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の当初交付額に対し、約28千円の残額が生じた。これを次年度の物品費用へ充当する。したがって、平成25年度の直接研究費は約828千円である。その内、物品費(材料費や切断砥石、研磨円板・研磨液等)は528千円、研究成果発表のための旅費は200千円、会議登録料や投稿料は100千円。
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