研究課題/領域番号 |
23560843
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
戸高 孝 大分大学, 工学部, 准教授 (50163994)
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キーワード | 微小永久磁石 / ネオジム磁石 / ナノコンポジット磁石 / 回転液中紡糸法 / 単ロール法 / 保磁力 / 飽和磁化 / レアアースフリー |
研究概要 |
本年度は、SmCo5とSm2Co17をメインにして回転液中紡糸法による微小永久磁石の作製および測定を行った。NdFeB系と同様に、回転液中紡糸法での試料作製時に使用するノズル径を0.3mmから0.1mmまで変化させ急冷速度を変化させたところ、急冷速度が最も速くなるノズル径0.1mmで作製した試料での主相が安定しており、磁気特性も向上した。SmCo系の細線磁石は、妨錆剤の濃度を0.75%とした水溶液を用いて、ドラムの回転速度が250-280rpm程度、噴射圧0.18-0.34MPaで作製可能であるが、表面にはX線回折の結果、酸化物であるSm2O3の相が多く析出し酸化の影響を受けていた。SmCo5サンプルは飽和磁化が10-30emu/g と小さく、保磁力は急冷段階で400-500Oe程度であった。文献にある熱処理を3種類行ったが、磁気特性の改善は得られなかった。今後引き続き、最適な熱処理条件の検討を行う予定であるが、Sm2Co7相の共折変態が800℃辺りにあり徐冷するとSm2Co7相が出現し逆磁区の核生成サイトになり保磁力の低下に繋がることが知られており容易ではない。 一方Sm2Co17サンプルの保磁力は同様に400-500Oe程度であったが、飽和磁化は50-70emu/g 程度と倍以上あった。保磁力の向上のために、 Cu(0.15wt%)とFe(0.06wt%)を添加したところ、保磁力は僅かに増えたものの、飽和磁化が低下した。原因としては、 添加元素量のバランスの問題と考えている。本試料は熱処理により、飽和磁化と保磁力が向上した。 液温の制御機構での実験に関しては、冷却水の使用によって、急冷速度を僅かに上げてその効果があることを確認できた。今年度は、冷却水の適切な選定を行いながら、NdFeB 系磁石での検討も再度行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SmCo系細線磁石に対して、回転液中紡糸法での試料作製条件を明らかにし、作製時のノズル径や熱処理条件と保磁力の関連を明らかにできた。また、冷却液の温度を下げることで、急冷速度を僅かに上げて主相の析出量と結晶粒の微細化に効果があることを確認できた。希土類元素(Nd, Sm)の酸化の影響は液中紡糸法ではこれ以上は避けられない。SmCo系の細線磁石の最適な熱処理条件の解明はまだできていない。SmCo系細線磁石と、これまで検討してきたNdFeB 系磁石を比較すると、飽和磁化の大きさはNdFeB 系が大きく、熱処理の容易性でも勝っている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度であり、希土類を含まない組成(FeCoCr等)での細線磁石の作製実験を加速する。またNdFeB 系磁石では、急冷速度の向上を目指して酸化抑制が可能な冷却液の温度を極力下げる検討を行い、保磁力の向上や結晶粒の微細化のための第4元素の添加について前年度と同様の検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に繰り越して使用する予定の助成金は無い。 次年度の研究費使途は主に金属材料、石英ノズルやアルゴンガス等の消耗品費と旅費(国内会議2件<箱根、北海道、国際会議1件<ギリシャ&ハンガリー>)を計画している。
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