研究課題/領域番号 |
23560844
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
筧 幸次 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (70185726)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 高温材料 / 耐熱材料 |
研究概要 |
インコネル718を供試材とした.この合金は,耐熱性のみならず溶接性に優れているため,航空宇宙材料としてロケットエンジンや航空機エンジンに幅広く使用されている.ボーイング777に搭載されているPW4000エンジンでは,全重量の実に24%をインコネル718が占めている.この供試材の組織について,光学顕微鏡,走査型電子顕微鏡を用いて組織観察を行った.さらに,プラズマ回転電極法(PREP;Plasma Rotating Electrode Process)により,インコネル718の高品質金属粉末を作製した.供試合金は,高純度不活性ガス環境下で回転する電極が高温プラズマによって溶解され,液滴として電極表面から遠心力によって吹き飛ばされ,さらに電極の周辺に配置されているガス・ノズルから噴出するガスジェットの空気力学的引張力によって第2次的な粉砕によって微粉化される.このプロセスでは,酸素,電極および炉材による汚染の回避が可能で高品位粉末が製造できるのが特徴である.比較材としてアトマイズ法により作製した金属粉末を米国より入手した.PREP合金粉末および比較材のガスアトマイズ合金粉末について,析出物の固溶温度以下で熱間等方圧加圧法(HIP)処理を行い,超合金焼結体を作製した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に計上していた備品「IP読み取り機能付きラウエカメラ」が,大学の老朽更新予算で購入することができたため,この予算を次年度以降に使用するが,研究自体はおおむね順調に進展している.プラズマ回転電極法や熱間等方圧加圧法(HIP)の条件を見出すのに時間を要すると予想されたが,処理を委託した金属技研の尽力もありHIP処理による焼結試料作製までたどり着くことができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,インコネル718に加え,新規実用合金について焼結試料を作製し,試料の特性評価と分析を主たる研究とする.具体的研究の計画を以下に示す.(1)焼結 これまでは,インコネル718について試料作製を行ってきたが,ゼネラルエレクトリック社で開発された実用粉末焼結合金について試料作製を行う.プラズマ回転電極法合金粉末および比較材のガスアトマイズ合金粉末について,固溶温度以下でHIP処理を行い,超合金焼結体を作製する.HIP処理は,金属技研の装置を使用して共同して行う.(2)熱処理 それぞれの合金に,規定された以下の標準熱処理を施す.インコネル718: 955℃/1h溶体化処理,720℃/8h+620℃/10h 2段階時効処理新規合金:所定の熱処理(文献調査) (3)機械的特性評価 PREP合金,比較材としてガスアトマイズ合金を試験に供する.インコネル718は650℃以上で析出強化相であるγ''相がδ相に変化する.そこで,試験温度は使用上限温度である650℃とする.試験温度650℃で,引張試験およびクリープ試験を行う.また,温度1050℃,歪速度4×10-5~8×10-3・sec -1の条件で引張試験を行ってひずみ速度感受性指数m値,全伸びを測定して超塑性特性について調べる.(4) オージェ電子分光法(Auger Electron Spectroscopy;AES)による粒子表面元素分析 表面分析法であるオージェ電子分光法を用いて,作製した合金粉末表面の酸素の元素分析を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に計上していた備品「IP読み取り機能付きラウエカメラ」が,大学の老朽更新予算で購入することができたため,新規の試料の作製が可能になり試験条件を多様化することが可能となった.この予算を次年度に,粉末作製とHIP粉末焼結に使用する.主な研究費を以下に示す.(1)新規合金粉末購入 500千円,(2)HIP委託費用 500千円(3)試験片作製費用 800千円
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