研究課題/領域番号 |
23560847
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
藤原 弘 同志社大学, 理工学部, 准教授 (80320117)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ネットワーク構造 / 複合調和組織 / 高速度鋼 / メカニカルミリング / 放電プラズマ焼結 |
研究概要 |
これまでの研究により、高強度を示すネットワーク状微細粒組織に、高延性を示す粗大粒組織が分散している調和組織材料は、高強度かつ十分な延性を示す事が報告されている。本研究では高硬度材料として、工具鋼の一つである高速度鋼に着目した。高速度鋼は超硬工具材と比較して硬度が低いという欠点があるものの、比較的靭性が高いという特徴をもつ材料であり、これまでの研究により高速度鋼粉末に強ひずみ加工を施すことにより結晶粒を微細化し高硬度を得られることが明らかになっている。そこで、高速度鋼の機能性改善を目指して、高速度鋼のネットワーク構造を持ち、その間に炭素鋼を分散させた複合調和組織材料を創製し、その微細組織と機械的性質について検討した。高速度鋼と炭素鋼を用いて、メカニカルミリング(MM)法および放電プラズマ焼結法によって、複合調和組織材料を作製した。種々のMM 条件を検討した結果、炭素鋼粉末の粒子径を維持し、炭素鋼粒子の周りに微粒子化された高速度鋼粉末がコーティングされるような複合MM粉末を作製した。作製した複合MM粉末のSEM / EDS分析の結果、炭素鋼粒子周りに高速度鋼微細粒子の層が形成されており、複合MM粉末が作製できていることが確認できた。そして、その複合MM粉末を放電プラズマ焼結法により焼結し、種々の条件の焼結体を作製した。作製した焼結体の元素分析の結果、結晶粒径が1μm程度の高速度鋼で構成された微細結晶粒部がネットワーク構造を有し、約30μm程度の結晶粒径の亜共析組織を有する複合調和組織が形成されていることが確認できた。このような複合調和組織を有する焼結体と、高速度鋼粉末と炭素鋼粉末の単純混合組織焼結体とを比較すると、複合調和組織焼結体のビッカース硬さは約20%向上した。以上のことより、高速度鋼のネットワーク組織を有する複合調和組織の機械的性質に対する優位性を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画していたネットワーク構造を有した高速度鋼による工具鋼材料を作製することができ、機械的特性の評価として硬さ試験を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
ネットワーク構造工具鋼は作製でき、機械的性質の向上も認められたが、最適な材料設計にはいまだ至っていないので、さらなるネットワーク状微細組織設計を推進していく。また、種々の機械的特性の評価(特に工具鋼として重要な耐摩耗性評価)について検討を行う必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に、ネットワーク構造工具鋼の作製にかかる消耗品費および研究成果発表のための旅費に研究費を使用する予定である。
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