研究課題/領域番号 |
23560847
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
藤原 弘 同志社大学, 理工学部, 准教授 (80320117)
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キーワード | 調和組織 |
研究概要 |
H24年度では,ハイス鋼および炭素鋼を用いた複合調和組織材料をメカニカルミリング法および放電プラズマ焼結法により作製し,その微細組織観察および機械的性質を詳細に検討した結果,以下のことが明らかとなった. (1).微細粒子ハイス鋼粉末と粗大粒子炭素鋼粉末を混合し,メカニカルミリングを行うことで,粉末表面近傍がハイス鋼であり内部が炭素鋼である複合化粉末を作製することができ,その複合化粉末を放電プラズマ焼結することにより,ハイス鋼/炭素鋼複合調和組織材料を作製できることが明らかとなった. (2).ハイス鋼体積率15.4%のハイス鋼/炭素鋼複合調和組織材料の平均硬さは405Hvであり,ハイス鋼粒子分散複合材料の平均硬さは339Hvであり,複合調和組織材料は一般的な粒子分散複合材料よりも硬さに優れることが明らかとなった. (3).ハイス鋼体積率15.4%のハイス鋼/炭素鋼複合調和組織材料の引張強さは725MPaであり,全伸びは14.5%であるのに対し,同ハイス鋼体積率の粒子分散複合材料の引張強さは523MPaであり,全伸びは12.5%であった.このことから,複合調和組織材料は粒子分散複合材料に対して,延性を維持しながら高強度であることが明らかとなった. (4).ハイス鋼/炭素鋼複合調和組織材料のハイス鋼体積率と機械的性質との関連性においては,ハイス鋼体積率が増加すればするほど引張強さは上昇する.全伸びはハイス鋼体積率15.4%で最も大きな伸びを示すことが明らかとなった. 以上の研究成果に関連した国際会議発表:3件(プロシーディングス:2報),国内学会発表:4件(優秀講演発表賞受賞:1件),依頼講演:2件,論文発表:1報,および粉末冶金工業会第10回PM研究促進展奨励賞受賞.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で示したように,国際会議発表:3件(プロシーディングス:2報),国内学会発表:4件(優秀講演発表賞受賞:1件),依頼講演:2件,論文発表:1報,および粉末冶金工業会第10回PM研究促進展奨励賞受賞の研究成果を挙げることができたためである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題のタイトルは「ネットワーク組織制御による高硬度・高靭性工具材料の開発」である。ネットワーク組織制御は、現在では調和組織制御と呼んでおり、この組織制御を適用することにより、強度・延性バランスに優れた、言い換えれば高靱性工具材料を開発できることが、今年度までの研究により明らかとなった。タイトルにあるように高硬度工具材料に対する検証は未だ十分ではないため、次年度にこれを明らかにする予定である。そして、高硬度工具鋼に求められる耐摩耗性は比較的良好である実験結果が一部得られているため、次年度には、「ネットワーク組織制御(調和組織制御)による高硬度・高靱性工具材料の開発」に関する研究テーマは完了できる見込みである。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用研究費が生じた理由については、今年度は近隣の地域で開催される学会等が多く、旅費の使用および旅費の金額が少なかったためである。 次年度研究費の使用計画においては、材料作製に必要なメカニカルミリング装置や放電プラズマ焼結装置などの消耗品および学会発表に必要な旅費、そして論文投稿にかかる費用等の用いる予定である。
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