研究課題/領域番号 |
23560849
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研究機関 | 鈴鹿工業高等専門学校 |
研究代表者 |
南部 智憲 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (10270274)
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研究分担者 |
松本 佳久 大分工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (40219522)
湯川 宏 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50293676)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 水素 / 金属物性 / 格子欠陥 / 構造・機能材料 / エネルギー効率化 |
研究概要 |
Pd系水素透過合金膜では、膜表面にFe2O3などの金属系酸化物粒子が付着すると、粒子周囲にガスリークの原因となる溝状の欠陥が形成される。Pd系水素透過合金膜の長期耐久性能を向上させるために、溝状欠陥を形成しないPd系水素透過合金の設計開発が求められている。そこで平成23年度では、合金元素として周期表第5、6族金属に注目し、これらの元素の添加による溝状欠陥の形成防止効果を調査した。 Pd-1mol%M合金(M=V, Cr, Nb【周期表第5族】, Mo, Ta, W【周期表第6族】)をアーク溶解し、得られたボタンインゴットの均質化熱処理、圧延加工、および歪み取り熱処理を行い、厚さ約0.2 mmの板状試料を準備した。板状試料より、5mm×5mm×0.2mm角の試験辺を切り出し、表面にFe2O3粒子を塗布して773 Kの水素中で熱処理した。また比較のために、純PdおよびPd-25mol%Ag合金についても同様の実験を行った。熱処理後のFe2O3粒子周囲の形態変化をSEM観察した結果、純PdおよびPd-25mol%Ag合金では、Fe2O3粒子周囲に大きな溝状欠陥を形成した。一方、周期表第5、6属金属を添加したPd合金では、Fe2O3粒子周囲に溝状欠陥を形成していないことが明らかとなった。 アーク溶解したPd-20mol%Ag-1mol%W合金を用いてφ12mm×0.15mmの膜試料を作製し、573K~773Kの温度条件下で水素透過試験を行った。その結果、Pd-25mol%Ag合金と同等の水素透過係数が得られた。このように、周期表第5、6族金属をわずか1mol%添加することによって、高い水素透過能を維持しつつ、Fe2O3粒子の付着による膜劣化を防止できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度はPd-1mol%M合金(M=V, Cr, Nb【周期表第5族】, Mo, Ta, W【周期表第6族】)合金を溶製し、Fe2O3粒子付着による膜劣化防止効果、および水素透過能を評価することを目的とした。計画通りの実験項目を順調に遂行したことにより、周期表第5、6族金属の添加が高い水素透過能を維持しつつ、Fe2O3粒子の付着による膜劣化を防止できることを明らかにした。したがって、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、溝状欠陥の形成に及ぼす、周期表第5、6族金属以外の元素の添加効果を系統的に調査し、欠陥形成の防止効果を有する元素と有しない元素とに分類する。これらの実験結果より、防止効果を有する元素の共通点を見出し、欠陥形成の防止機構を明らかにする。また、溝状欠陥を形成する温度や水素圧力、合金組成など、種々の条件を整理し、長期耐久性能に優れるパラジウム系水素透過合金膜の機能設計に有効な指針を確立する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度では、溝状欠陥の形成に及ぼす周期表第5、6族金属以外の元素の添加効果を系統的に調査することを目的としている。そこで研究費を主に金属原料の購入、合金試料の溶解にかかわる消耗品費、および酸化物塗布試験ならびに水素透過試験にかかわる消耗品費に充てる。また、研究成果の公表にかかわる旅費ならびに論文投稿費に充てる。
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