研究概要 |
平成23年度の研究実績に関して以下2点に分けて概説する。1)第一原理手法を用いたB1-MX相、Z相の熱力学量の理論計算を広範な合金系に対して行った。対象とした合金系は、4,5,6,7族元素を中心とした遷移金属元素の複合窒化物である。その結果、これまで実験から予測されていたように、種々のZ相のなかでも、Ta系のZ相の生成エネルギーが特に負で大きい値を持つことが明らかとなった。この結果は、Ta系のZ相は他のZ相よりも安定であり、Fe基合金中の弱化因子としてのZ相ではなく、強化因子(安定化合物)としてZ相を積極的に利用できる可能性を強く示唆するものである。さらに、これらMX,Z相に加えて、Fe合金中にはその他にも種々の炭化物・窒化物が析出するが、特に熱力学データが不足している化合物について熱力学データの再検討を進め、生成エネルギーの理論計算が必要な系の選定を開始した。2)熱力学計算に関しては、FactSage用の熱力学データベースを購入したことで、現在広範に用いられている各熱力学データベースを整備することができた。これにより、平成24年度から行うカルファド法による熱力学計算に必要な環境を整えることができた。
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