研究課題/領域番号 |
23560855
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
阿部 英樹 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (60354156)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 超耐熱合金 / 粉末冶金 / ナノ粒子 / 前期遷移金属 / 液相反応 / 常温常圧 / ニッケル / アルミニウム |
研究概要 |
常温・常圧の非プロトン性溶媒中における有機金属錯体の化学還元により、ニッケルと亜アルミニウムから成るNi-Al合金ナノ粒子(平均直径10 nm)の合成に成功した。Ni-Alは超耐熱合金の主体を成す重要な合金相であるが、構成元素であるAlの空気安定性が極めて低いため、従来の粉末冶金原料粉末の大きさは最小でも1 microm程度に留まってきた。本成果はこれまでの壁を破り、従来材料の1/100の直径を備え、しかも常温常圧の大気中で安定な新規粉末冶金原料:Ni-Alナノ粒子を実現した。これは、本研究の達成目標である「超耐熱合金原料超微粒子化技術」の確立に向けた決定的なブレイクスルーである。2012年5月7日現在、本成果の知的所有権を確保するため、投稿論文の作成と並行して特許出願準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、最終目標のひとつとして、ほとんどの超耐熱合金の主成分を成すNi-Al合金のナノ粒子化を据えている。しかし、研究開始当初の達成目標として実際に選んだのは、Ni-Al合金ナノ粒子ではなく、Ni-Ti合金ナノ粒子であった。その理由は、第一に、本研究提案に先立つPt3Tiナノ粒子の開発研究を通じて培われたノウハウを、Ni-TiとPt-Tiとの構造的・化学的類似に拠って最大限利用できると期待されたためであり、第二に、Al3+ (E= -1.68 V)は標準酸化還元電位がTi4+(E= -1.63 V)よりも低く、還元されにくいため、Ni-Alナノ粒子の合成はNi-Tiナノ粒子の合成より困難であることが予想されたためである。しかしその後、Ni-Tiナノ粒子合成条件の最適化を行う過程で新たに見いだされた有機溶媒溶解性のニッケルプリカーサー:NiGlyme2/LiCl(特許申請準備中)とLiAlCl4から出発することにより、世界で初めて、大気圧下におけるNi-Alナノ粒子の合成に成功した。これは当初目標を大きく超え、最終目標に肉薄する、予想外の進展であった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度の研究によって見いだされた有機溶媒溶解性ニッケルプリカーサー:NiGlyme2/LiClを出発物質として利用し、超耐熱合金の構成相であるNi-Ti、Ni-Cr、Ni-Nb、Ni-Mo、Ni-W、およびNi-Ta合金のナノ粒子化に挑む。本年度の研究によって確立された走査型透過電子顕微鏡とシンクロトロン硬X線光電子分の併用によるナノ粒子同定法を駆使し、創生されたナノ粒子の化学組成・結晶構造と電子状態を解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
全自動賦活式酸素・水分吸着塔1台を導入する。本装置は、空気不安定性の高いプリカーサーおよび試料を取り扱う上で不可欠な現行装置であるグローブボックスに装着する。グローブボックス内部の雰囲気は常時、酸素・水分濃度合わせて5 ppm以下に保たれていなくてはならない。酸素・水分を吸着するための吸着塔が現在取り付けられているが、この装置は16年前に購入された手動賦活式の旧型装置であり、グローブボックス本体と比較して(グローブボックス本体は2007年に購入)、陳腐化・老朽化が著しい。グローブボックスは本研究の中核であるナノ粒子合成において必須の装置であるため、自動賦活式酸素・水分吸着塔の導入により、研究効率の大幅向上が期待できる。
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