研究課題/領域番号 |
23560859
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田邉 匡生 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (10333840)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | テラヘルツ / 化成処理皮膜 / リン酸亜鉛 / 水和構造 / 非破壊検査 |
研究概要 |
実用材料表面について化成処理皮膜の状態及びその分布を解析する手法が求められている。テラヘルツ波は室温程度の弱いエネルギーを有するため、物質の形態に関係する結晶性についての評価が可能であると期待されているが、テラヘルツ物性は最近ようやくデータベースとしてのスペクトルが測定されはじめたにすぎず、ほとんど解明されていない。そこで本研究ではリン酸亜鉛を対象とし、高分解能テラヘルツ分析装置を用いて、結晶サイズや水和構造が異なる状態のテラヘルツスペクトルを測定する。結晶形態のマクロな違いや水和物形成におけるテラヘルツスペクトルの変化からリン酸亜鉛の微細構造を検出し、鋼板表面におけるその状態・分布を電気化学測定と合わせて議論することを目的としている。 平成23年度はリン酸亜鉛粉末試料の作製とテラヘルツスペクトル測定を行った。結晶のサイズや形態が異なる粉末状態のリン酸亜鉛を作製するプロセスを検討した。ウェットプロセスだけでなく赤外線加熱炉を用いることにより、水和数が異なる種々のリン酸亜鉛を作製することが可能となった。現有するテラヘルツ分析装置を用いて、リン酸亜鉛の各種水和物のテラヘルツスペクトルの変化を測定した。さらにそれらの試料に対して電子顕微鏡や光学顕微鏡などによる形状観察、X線回折測定による構造評価、赤外・ラマン分光などの分析を合わせて行った。リン酸亜鉛結晶の化成処理皮膜として必要とされる緻密さや均一性に着目して、テラヘルツスペクトル・イメージングのデータを系統的に解析するために、テラヘルツスペクトルのリン酸亜鉛・水和数による変化を分子軌道計算により議論した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はリン酸亜鉛を対象として、顕微鏡観察をはじめXRDや赤外・ラマン分光など各種分析とともに下記の実験を行い、テラヘルツスペクトルについて結晶形態や水和構造との関係を明らかにし、化成処理皮膜に必要とされる結晶の緻密さと均一性について議論するものである。(1)異なる製法・条件によるリン酸亜鉛粉末試料の作製とテラヘルツスペクトル測定(2)加熱乾燥セルの導入と水和水脱離プロセスにおけるテラヘルツスペクトルの測定(3)鋼板表面におけるリン酸亜鉛被膜のテラヘルツ分光イメージング測定と電気化学測定平成23年度に(1)及び(2)について実施でき、平成24、25年度においてはテラヘルツスペクトルの解釈にあわせて、(3)を進める状況にあり、おおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度はまず電気化学測定ができるシステムを構築する。リン酸亜鉛めっきした鋼板を対象として、リン酸亜鉛の析出条件とテラヘルツスペクトルと電気化学測定を進めていく。リン酸亜鉛めっき鋼板の腐食挙動を把握するため、アノードおよびカソード分極曲線の電気化学測定を行う。リン酸亜鉛皮膜のテラヘルツスペクトル・イメージングと耐食性の相関について議論していく。なお、皮膜の厚さは数マイクロメートルであるため、リン酸亜鉛めっきのテラヘルツスペクトルが良い精度で測定できない場合は高感度測定法を検討する。さらに、テラヘルツスペクトルを解釈するために、他の無機水和物を対象とするテラヘルツスペクトル測定及び解析を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
リン酸亜鉛めっきのテラヘルツスペクトルが高感度に測定できないときは、内部全反射測定や多重反射測定などの複雑な光学系を検討する必要があり、平成24年において研究する。また、テラヘルツスペクトルの解釈は大型計算機によるシミュレーションをもとに進めているが、計算に日数を要するため、平成24年度においても継続する必要がある。
|