実用材料表面について化成処理皮膜の状態及びその分布を解析する手法が求められている。テラヘルツ波は室温程度の弱いエネルギーを有するため、物質の形態に関係する結晶性についての評価が可能であると期待されているが、ほとんど解明されていない。そこで本研究ではリン酸亜鉛を対象とし、独自のテラヘルツ分析装置を用いて、異なる水和構造におけるテラヘルツスペクトルを測定し、テラヘルツスペクトルと結晶形態の相関を議論した。さらに鋼板表面における非破壊検査技術としての可能性を示した。 本研究で行う「マクロな結晶形態や水和物形成におけるテラヘルツスペクトルの変化を知る」ことは水和物を含む微細構造に着目してテラヘルツスペクトルを理解するという学術的に重要なものであり、分子振動のスペクトル解析に用いられることが多い重水素化による吸収ピークのシフトによる議論とは異なる創造的な研究といえる。 最終年度である25年度は水和構造が異なる金属塩のテラヘルツスペクトルにおいて、リン酸亜鉛について得られている結晶構造および水和構造とテラヘルツスペクトルの相関をもとに構造の分布を議論した。 腐食試験後の溶融亜鉛めっき鋼板に対して、室温ならびに加熱セルを用いたテラヘルツ反射スペクトル測定を行った。結果として、測定温度により吸光度が減少する吸収ピークや、中心周波数が変化する吸収ピークがあることが確認された。それらの原因としては、腐食生成物の水和構造が変化することだけでなく、加熱により別の化合物に変化することも考えられる。
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