本研究は,(1)亜鉛系表面処理鋼板の端面腐食過程を詳細に測定し,その機構を解明すること,(2)シミュレーションを端面腐食機構の解析に適用し,精緻な端面腐食モデルを構築すること,(3)亜鉛系表面処理鋼板の端面腐食を抑制する新規かつ高度な防食技術を確立することを目的として実施された.研究初年度では,亜鉛系表面処理鋼板の端面腐食過程を,腐食生成物の堆積分布と電気化学特性の分布に着目して調査するため,微小電気化学測定装置を開発した.これにより,150um径程度の微小領域における電気化学特性分布の調査が行えた.2年目以降では,溶液組成,溶液濃度など腐食因子に対して,端面部の模擬試料となる亜鉛/鋼板対の腐食過程を調査した.具体的には,濃度の異なる塩化ナトリウムおよび塩化マグネシウム水溶液中における亜鉛の腐食速度調査,腐食生成物の堆積状況とその組成分析,腐食生成物堆積状況下における鋼板の電位およびアノード・カソード分極特性の調査を行った.その結果,研究最終年度までに,腐食生成物の堆積状況は亜鉛めっきからの距離に応じて変化すること,腐食生成物が堆積した鋼板上でのカソードおよびアノード反応いずれもが裸鋼板上より電流値が小さく,腐食生成物の堆積により反応速度が抑制されることがわかった.特にMgを含む亜鉛の腐食生成物や塩基性塩化亜鉛が堆積により反応の抑制が顕著であった. 以上の成果より,亜鉛系表面処理鋼板の端面腐食機構と環境因子の影響について明らかにした.また,Mgイオンを含む環境において反応抑制効果について知見が得られ,新しい防食技術への応用が期待された.これらの成果によって,おおよその研究目的を達成できた.しかし,マルチフィジックスシミュレーション援用による端面腐食モデル確立については,種々の腐食生成物が堆積した鋼板上での電気化学特性データベースの構築が必要であり,今後の課題である.
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