原子力プラントなど厚板鋼構造物において、安心確保のため高品質化・高信頼化が重要な課題であり、とくに、機械的な品質は材料の接合状態(溶接状態)に依存している。溶接時に酸素を遮断した純Arシールドガスを用いた消耗電極(ミグ)溶接が品質の向上に役立つが、アーク現象が不安定になる。そこで、クリーン(金属蒸気が発生しにくい)なプラズマ溶接を組み合わせて、高能率な消耗電極(ミグ)溶接を協調することにより、ミグ溶接のアークを安定化できるハイブリッド溶接技術を確立した。 具体的には、プラズマ溶接電源ならびにミグ溶接電源の2台の溶接電源を用いた。溶込み確保のために、プラズマ溶接をミグ溶接の前に行う。このため、プラズマ溶接のトーチを先行電極とし、後方電極をミグ電極とした。これらの電源が独立して動作すると、これら2種類の電極からのアークにより電磁干渉が生じる。それぞれの電極の極性が同じ場合、電磁力により、極間に引力が強く働く。この結果、ミグ電極からの溶滴が溶融池の方向に飛ばず、引力により、プラズマ電極の方向に飛散する。一方、極性が異なると電磁力が斥力となる。そこで、この電磁力を利用して、ミグ電極からのアークおよび溶滴移行を安定化させる。通常、Arシールドガスを用いたミグ溶接では溶融池に酸化物が生じないことにから、陰極点が不安定になり、アークが安定しなく、溶滴移行も安定にならない。しかし、斥力を用いることにより、Arシールド化でもミグアークの方向を安定化でき、これにより溶滴移行も滑らかに行えるようになった。プラズマ溶接およびミグ溶接にパルス電流を採用し、この電磁力を効果的に利用するため、2つの電源の同期を取った。すなわち、互いのピーク電流期間を一致させた。電極間距離を実験により最適に調整し、安定で高品質なクリーン溶接を実現した。
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