研究課題/領域番号 |
23560864
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宅田 裕彦 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (20135528)
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研究分担者 |
浜 孝之 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (10386633)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ロール成形 / 高張力鋼板 / 電縫鋼管 / 高延性 / 環境材料 |
研究概要 |
本年度得られた成果を以下に箇条書きで示す.(1)ロール成形時の板材の変形メカニズムを実験的に明らかにするため,成形中に最も大きな塑性変形を受けるロール直下でのひずみ測定方法を検討した.ロールに微小な幅の溝を設けてその間をひずみゲージが通過できるようにすることで,ひずみゲージとロールが接触することなく成形中のひずみ推移を測定できる機構とした.この際の適切な溝幅やひずみゲージサイズを検討した.種々の検討により,ひずみゲージとロールの接触を防ぎ,かつ適切にひずみを測定できる最適な実験条件を決定した.モデル実験法が確立されたことで,鋼種およびロール条件が成形性に及ぼす影響を実験的に検討することが可能となった.(2)(1)で提案したモデル実験法を用いて,鋼種の違いが成形性(ひずみやスプリングバック)に及ぼす影響を検討した.鋼種の影響については,事前の予測通り,高張力鋼板では軟鋼板に比べてスプリングバックが大きいことが確認された.これは実機でも確認される現象であり,本モデル実験法の妥当性が示された.続いてロール条件が成形性に及ぼす影響を調査した.本年度に行った条件では,上ロール径が小さいほどスプリングバックが小さい傾向であった.またいずれの条件でも,従来用いられてきた初等曲げ理論から計算されるスプリングバック量に比べて小さかった.しかしながら,これらが普遍的な結果かどうかは今後検討する必要がある. (3)高精度な有限要素解析を行うための計算モデル検討を行った.様々な観点から検討した結果,(2)で行った種々の条件に対してひずみ推移およびスプリングバック量が実験と良好に一致する計算条件を見出した.高張力鋼板ではバウシンガー効果が成形性に大きな影響を及ぼすことが知られている.そこで,高精度にバウシンガー効果を測定できる実験装置を製作した.今後,材料モデルの成形性および解析精度に及ぼす影響を検討する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画では,平成23年度はモデル実験法の確立と各種成形条件がロール成形性に及ぼす影響の実験検討であった.結果としてこれら二つの内容に加えて,当初の予定では平成24年度に行う予定であった"有限要素法解析条件の検討"も行うことができ,またロール成形に適した計算モデルを確立することができた.これより,平成24年度以降は当初の予定からさらに進んだ研究の展開が期待される.以上の結果を総合的に鑑みて,【当初の計画以上に進展している】と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は有限要素法解析を中心に研究を展開する.まず,平成23年度に製作したジグにより素材のバウシンガー効果を測定し,材料モデルが成形性および解析精度に及ぼす影響を検討する.続いて,ロール成形における素材の変形メカニズムの検討を行う.平成23年度の研究では適切な計算モデルの確立に主眼を置いていたため,変形メカニズムを分析するところまでは至っていない.そこで平成24年度は,解析で得られたひずみ推移や応力推移を詳細に分析することで,高強度電縫鋼管のロール成形における変形メカニズムを明らかにする.ここでは特に,周方向変形と通板方向変形に分けて分析することで,成形条件によってメカニズムがどのように異なるのか,あるいは当初仮説をたてたように,通板方向変形を低減することで塑性変形量を低減させることができるのか,またそれによりスプリングバックをどこまで低減できるかに焦点を当てて考察する.また成形条件によって結果が変動する原因を併せて考察することで,成形メカニズムの理解を深めていきたい.また時間的余裕があれば,提案している新型ロールによる成形性を有限要素解析により検討していきたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,ロール成形のモデル実験およびバウシンガー効果測定実験に要する試験片やひずみゲージなどの消耗品を計上した.また,十分な成果が得られた時点で適宜学会にて講演発表する所存である.国内会議,国際会議につきそれぞれ一回ずつ参加すると試算した参加旅費を計上した.
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