• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

高延性を有する高強度電縫鋼管のロール成形法

研究課題

研究課題/領域番号 23560864
研究機関京都大学

研究代表者

宅田 裕彦  京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (20135528)

研究分担者 浜 孝之  京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (10386633)
キーワードロール成形 / 高張力鋼板 / 電縫鋼管 / 高延性 / 環境材料
研究概要

ロール成形における変形メカニズムについて,有限要素法解析を用いた理論考察を中心に研究を進めた.得られた成果を以下に箇条書きで示す.
①単スタント成形について解析を行い,材料強度やロール径などの成形条件がひずみ量や加工硬化に及ぼす影響を検討した.特に,周方向変形と通板方向変形に分けて分析を行った.得られた代表な成果を以下に示す.(i)板端部の通板方向膜ひずみは塑性変形開始とともに急激に増加する.そのときのひずみの最大値は強度の低い材料ほど大きい.(ii)ロール径が小さくなると,通板方向膜ひずみが大きくなる.(iii)ロール成形時の曲げ変形で生じる相当塑性ひずみは,従来用いられてきた平面ひずみ理論に基づく予測値に比べて非常に大きい.これは,上ロールと板材が密着することで,通板方向曲げだけでなく板材に作用する2軸の引張変形が影響した結果であると考えられる.この結果から,本研究で提案している新型ロールを用いることで板材に作用する2軸引張変形が低減され,それにより相当塑性ひずみを低減できる可能性が示唆された.(iv)ロール成形時の加工硬化量は,ロール径によらず低強度材の方が高強度材に比べて大きい.これは,低強度材では高強度材に比べてロール接触域に対してより上流から塑性変形が始まることで,相当塑性ひずみの最大値が高強度材よりも大きくなるためと考えられる.
②バウシンガー効果を考慮した材料モデルを用いて解析を行い,材料モデルが成形性に及ぼす影響を検討した.その結果,スプリングバックについてはバウシンガー効果の影響はほとんど見られなかった.この結果から,これまでのバウシンガー効果を考慮していない結果も十分妥当性があることが示された.一方材料に生じるひずみ量については,成形中の複雑な変形経路に起因して,バウシンガー効果の有無によって多少変化した.しかしその変化は,成形条件によって大きく異なった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の予定どおり,今年度は従来ロールを用いたロール成形解析を行い,その変形メカニズムを明らかにした.これを踏まえて来年度は予定どおり新型ロールによる実験および解析を行い,高張力鋼板のロール成形性の向上を目指す.また,当初の予定にはなかったものの,バウシンガー効果の成形性へ及ぼす影響についても着手することができた.以上の結果を総合的に鑑みて,【おおむね順調に進展している】と判定した.

今後の研究の推進方策

おおむね当初の予定通り研究が進展していることから,平成25年度も当初の予定通り研究を推進する所存である.具体的には,以下の項目を実施する予定である.①本研究で提案した新型ロールを用いて実験および解析を行い,その変形メカニズムの解明と有効性の検討を行う.それにより,新型ロールを用いることで高張力鋼板のロール成形性向上を達成できるか検討を行う.②これまでの検討では,主として単スタンドを想定した実験および解析を行ってきた.しかしながら実際のロール成形では,板材は複数のスタンドにより逐次成形される.またこのとき,ロール近傍での変形は次スタンドからの変形拘束が少なからず影響していることが考えられる.そこで,より実際の現場に近い条件での知見を得るため,複数スタンドを用いて実験および解析を行う.そして,これまで推進してきた単スタンドによる結果と比較を行い,次スタンドによる変形拘束の影響を明らかにする.
最後に,本研究を総括することで,高張力鋼板のロール成形特性を体系的に理解し,その上で提案した新型ロールを軸とした成形性の向上を達成するための具体的方策を検討する.そして,今後解決すべき課題の抽出を行う.

次年度の研究費の使用計画

平成25年度は,ロール成形のモデル実験に要する金型や試験片,ひずみゲージなどの消耗品を計上した.また,十分な成果が得られた時点で適宜学会にて講演発表する所存である.国内会議,国際会議につきそれぞれ一回ずつ参加すると試算した参加旅費を計上した.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 高張力鋼板のロール成形におけるスプリングバックの検討 -電縫鋼管のロール成形シミュレーション 第1報-2012

    • 著者名/発表者名
      井口敬之助,栗山幸久,師井直紀,浜孝之,宅田裕彦
    • 雑誌名

      塑性と加工

      巻: 53-622 ページ: 1003-1007

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Deformation behavior of high strength steel sheet during roll forming of electric resistance welded pipe2012

    • 著者名/発表者名
      Iguchi, K., Kuriyama, Y., Moroi, N., Hama, T., and Takuda, H.
    • 雑誌名

      Steel Research International

      巻: Special Edition ページ: 927-930

    • 査読あり
  • [学会発表] ロール間隙が板変形挙動に与える影響 -電縫鋼管のロール成形シミュレーション(第9報)-2012

    • 著者名/発表者名
      井口敬之助,松井洋介,浜孝之,宅田裕彦,栗山幸久
    • 学会等名
      第63回塑性加工連合講演会
    • 発表場所
      北九州国際会議場
    • 年月日
      20121104-20121106
  • [学会発表] ロール成形における板強度の影響 -電縫鋼管のロール成形シミュレーション(第8報)-2012

    • 著者名/発表者名
      井口敬之助,栗山幸久,師井直紀,浜孝之,宅田裕彦
    • 学会等名
      平成24年度塑性加工春季講演会
    • 発表場所
      コマツウェイ総合研修センター
    • 年月日
      20120607-20120609

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi