研究課題/領域番号 |
23560868
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
礒本 良則 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40127626)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | エロージョンコロージョン / FAC / ボイラー水 / 炭素鋼 / 皮膜成長 / 可視化 |
研究概要 |
本研究では,炭素鋼製の熱交換器,ボイラー等で生じるエロージョンコロージョン/FACが一般に流速1~2 m/sの比較的低い流速域に生じるなど,実験的には再現が難しい.そこで,独自な現場再現試験法により,現場と同じ環境における等速試験を行うこと,流動条件だけでなく,減肉速度を決定づける炭素鋼表面に形成される保護性皮膜の耐食性,生長過程を把握することを目的とし,最終的にエロージョンコロージョン/FAC発生条件のマッピングを作成し,再現実験における皮膜の成長過程のその場観察を行うことで,浸食発生条件のマッピングの妥当性を証明する. 研究の初年度にオリジナルマグネットポンプの試作,独自な現場再現試験装置の組み立て,試験部への顕微鏡の装着を試みた.オリジナルマグネットポンプの試作では,ステンレス鋼高圧容器の内外に取り付けたマグネットの磁力が容器の厚さによりそれほど強くなかったので,ポンプではなく,高圧容器内にロータを挿入し,ロータを回転することで流動場を与えることにした.最大回転数は1000 rpm,このロータの外周速度は約3 m/sである.試験片はエンジニアリングプラスチックの治具に固定し,容器から絶縁する.容器内の4箇所に4つの試験片を取り付けることを可能とした.高温・高圧に適用する装置試作の前に,常温大気圧下の流動状態の可視化を実施するための試験装置を組み立てた.縮小・拡大型の矩形流路を形成し,窓枠を設けて試験部とした.流動状態を設備備品の顕微鏡を用いて観察した.流路に奥行きがあるために,焦点を合わせにくいことが分かり,顕微鏡の架台に取り付け,上下移動や微細調整,焦点深度方向に微動ができるように工夫するが必要ある.一方,矩形流路を用いて140℃,pH 9環境の炭素鋼の腐食に及ぼす流速の影響を求めた.この結果は腐食防食協会の材料と環境2012(東京)にて発表する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
顕微鏡による高温,高圧環境下の炭素鋼皮膜のその場観察(可視化)を行うために,予備的な装置を組み立てた.それにより,観察を遂行するための問題点を見つけることができたが,その分本装置への顕微鏡の装着が遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
常温大気圧下で炭素鋼表面を観察するための試験装置に必要な条件が分かったので,その結果を参考にして,高温・高圧下で観察できる試験装置を組み立てることにする. 表面の酸化皮膜の成長を観察するために光源を用意する.また,長時間任意の時間における表面の観察画像を収録できるシステムを確認する. 試験の再現性を得るために,繰り返しの試験を行うこと,炭素鋼の皮膜形成に及ぼす流動条件の影響,環境条件の影響を調べ,エロージョンコロージョン/FACが発生する条件のマッピングを試みる.試験の再現性を確認するための別方法として,試験片の減肉の経時変化,浸食深さの試験片分布などを見ることにする. 得られた試験結果の妥当性を確認するために,現場における浸食結果を調査する.そのために企業の関連部署に問い合わせることにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
炭素鋼表面観察を行うための試験装置の一部分を製作する.主として,消耗品の購入に使用する.また,成果報告,調査のための旅費として使いたい.
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