研究課題/領域番号 |
23560868
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
礒本 良則 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40127626)
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キーワード | エロージョンコロージョン / FAC / ボイラー水 / 炭素鋼 / 皮膜成長 / 可視化 |
研究概要 |
本研究では,炭素鋼製の熱交換器,ボイラー等で生じる腐食が一般に流速1~2 m/sの比較的低い流速域に生じたり,あるいは乱れが生じている部位に生じることが言われているが,実験的に再現が難しい.そこで,独自な現場再現試験法により,現場と同じ環境における等速試験を行うこと,流動条件だけでなく,減肉速度を決定づける炭素鋼表面に形成される保護性皮膜の耐食性,生成過程を把握することを目的とし,最終的にエロージョンコロージョン/FAC発生条件のマッピングを作成し,皮膜の成長過程のその場観察を行うことで,浸食発生条件のマッピングの妥当性を証明する. 研究の初年度にロータを用いた流動装置,試験容器内への試験片の装着装置の組み立てを完了した.次年度には,実験を開始し,炭素鋼・低合金鋼の腐食量に及ぼす流速の影響,試験環境の影響を調べた.これにより,エロージョンコロージョン/FACの発生条件のマッピングの概要が分かった.また,炭素鋼および低合金鋼の表面に形成される酸化皮膜のSEM観察,EDXによる成分分析を行い,流動および試験環境が酸化皮膜の生成に大きな影響を及ぼすことを確認した.皮膜の性質は必ずしも緻密ではなく,流動および試験環境により変化することが分かり,皮膜の性質を具体的に表す手法を模索中である.これらの結果の一部を腐食防食協会や化学工学会の学会で発表した.一方,矩形流路を用いた流動環境の腐食挙動および皮膜の成長過程をその場観察を行うために,試験温度140℃,pH 9環境に耐えられる試験部の設計,製作や,窓枠の取付や,実体顕微鏡を用いた観察装置を設置した.矩形流路による流動の乱れは大きく,腐食が大きく加速されることが分かった.また,流速が低い場合(平均流速0.6 m/s)でも流路内の縮流部で流体が大きく乱されるために,生成した酸化皮膜が炭素鋼表面からはく離することを観察によって確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的に対して,皮膜成長のその場観察以外はほぼ達成されたと思われる.ボイラー水模擬環境において皮膜量,腐食量に及ぼす試験環境の影響,流動環境の影響,試験後の皮膜成長観察を行うことができた.酸化皮膜のその場観察については,次年度行うことによって,結果的に全般に渡って達成されるものと思われる.
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今後の研究の推進方策 |
皮膜成長のその場観察をそれぞれの試験環境,流動環境で実施する.皮膜の性質を多角的に評価する.
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次年度の研究費の使用計画 |
試験遂行のための消耗品,出張費用,報告書作成などに充てる.
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