近年,マイクロ部品の製造が注目されるようになり,粉末射出成型(MIM)による微細転写成形に関する研究も盛んになってきている.焼成により小形精密部品を製造する際は,粉末成形体の焼結収縮の制御が重要となる.このような中,MIMによるマイクロ構造体の寸法精度向上を念頭に,焼結体の寸法変動への粉末粒度分布の影響を調べる研究が行われている.これによると,粒度分布が小さい金属粉末を用いた場合に寸法精度が大幅に向上することがわかっている.一方,本研究では,焼結変形挙動を理論的に予測するために,前年度までフェーズフィールド法(PFM)と個別要素法(DEM)を連成させる解析手法を開発してきた.これにより,DEMにより焼結収縮を,PFMにより結晶粒成長をシミュレートし,PFMで得られる気孔形状はDEMにおける焼結駆動力に,DEMで得られる剛体運動はPFMにおける移流項に,それぞれ反映させることができるようになった. 最終年度である今年度は,開発した連成解析手法の妥当性,有用性を確認するために,上記の実際のマイクロ構造体の焼成プロセスに,本手法を適用した.すなわち,平均粒径が同じで粒度分布幅が異なる2種類の粉末を用い,MIMにより作製した四角柱状粉末成形体(幅150ミクロン,高さ200ミクロン)を基にして,計算モデルを作成し,焼成シミュレーションを行った.計算結果を基に,焼結収縮による寸法形状の変化を調べたところ,分布幅が小さいほうが焼結体の場所による収縮率の差が小さく,全体の寸法変動が少ないという傾向が得られた.これは実験で得られた結果,すなわち,粒度分布が狭い場合に寸法精度が向上する傾向と一致し,PFM/DEM連成解析が有効であることを裏付けることができた.
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