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2011 年度 実施状況報告書

ニューコンセプトTi基バイモーダルコンポジットの合成と評価

研究課題

研究課題/領域番号 23560871
研究機関大阪府立大学

研究代表者

津田 大  大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80217322)

研究分担者 松井 利之  大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 教授 (20219372)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード(α+β)Ti基複合材料 / α-Ti析出 / 微細組織 / Fe添加 / N2添加 / TiC / β-Ti安定化
研究概要

今年度は、(α+β)Ti、あるいはβ-Tiマトリックス基Ti基複合材料中のTiC粒子へのα-Ti析出に着目して研究を行った。このために、TiC分散量は5Vol%で一定とし、FeおよびN2を0~10at%の範囲で変化させ(α+β)Ti、あるいはβ-Tiという異なったマトリックスを有する複合材料を反応アーク溶解法で準備した。得られた結果は下記のとおりである。。 まず、N2を含まない試料のX線回折(XRD)結果から、Fe組成の増加に伴いα-Tiの回折強度は明らかに低下し、β-Tiの強度は強くなることが判明した。さらに、Fe組成が10at%ではα-Tiの回折線は確認できないことが明確になった。つぎに、Fe組成を3at%に固定し、N2量を変化させた試料のXRD結果は、TiCからの回折ピークがN2組成の増加に伴い高角度側に、またαおよびβ-Tiの回折ピークは低角度側にシフトすることを明確に示した。TiCのピークの高角度側へのシフトはTiCのC/Ti比の変化、すなわちTiCの格子定数が小さくなって行くことを示唆している。さらにTiの回折ピークの高角度側への変化はTiの格子中へN2が固溶したことによるTi格子の膨張によるものと推測される。 OMおよびSEMによるTiC粒子の微細組織観察結果によると、TiCの粒子サイズはN2添加量に極めて敏感であり、N2添加量増大に従ってそのサイズは明らかに粗大化することが示された。また、マトリックスであるα-Tiの比率はFe添加ともに低下した。さらに、N2を3at%以上、Feは8at%以下の組成においてのみTiC粒子にα-Tiが析出する特異な組織が確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

まず、Ti、C、FeおよびTiNの各粉末から、(α+β)Tiをマトリックスとし、TiCを5vol%分散させたTi基複合材料を合成する。そして、FeおよびN2組成を変化させ如何なる組成でTiC中にTiの析出が開始するかを明確にすることを目的とした。 FeおよびN2添加量を0~10at%の範囲で変化させ、XRDでの構成相の同定およびOM、SEMによる 微細組織観察結果によればアーク溶解後の熱処理なしで、Fe添加のみでマトリックスを(α+β)Tiマトリックス、あるいはβ-Tiマトリックッスに制御できることを見出した。これは本法でアーク溶解した場合、アーク放電を停止して時点で、溶融状態から冷却が開始されるが、Fe添加量が変化しても変態終了温度が725~750℃で一定であることに起因していることが判明した。これは、想定外の新しい発見でもあった。この結果、FeおよびN2添加がTiC粒子の微細組織に及ぼす影響を直接的に調べることが可能となり、N2を3%以上、Feを8at%以下添加した場合にTiC粒子内にα-Tiが析出するという結果を得ることに繋がったと考えられる。 上記のとおり、平成23年度についての研究の進捗状況は概ね順調である。

今後の研究の推進方策

この年度では、(α+β)TiをマトリックスとしてTiC体積率の高い材料(50vol%以上)をN2ガス下で作製することを目指す。体積率の高い材料については重力偏析のため粒子が均一に分散しないことが懸念されるが、もしTiCの不均一分散が見られた場合には反応アーク溶解中に溶湯を揺動させる工夫を試みる。 一方、Ti-C系状態図によればTiリッチなTiCは約1500℃の高温度域ではTi2C単相として存在する。そこで、Ti2Cの単相領域から急冷を施し、相安定性を調査する。すなわちTi2CとTiCの結晶学的類似点あるいは相違点等からセラミックスへの金属相析出を検討する。 また、TiC中へのTi析出とマトリックスの構造との関係は全く未知である。α相(hcp)とβ相(bcc)の比率を変化させ、β相が母相となる組成においてもTiC中へのTi析出が起きるか、その時の方位関係は如何なるものかを調査する。 つぎに、TiC粒子へのTi析出に関すること等微細組織観察を透過電子顕微鏡による高分解能観察により、精力的に進める。

次年度の研究費の使用計画

この年度では、(α+β)TiをマトリックスとしてTiC体積率の高い材料(25vol%以上)をN2ガス下で作製することを目指す。体積率の高い材料については重力偏析のため粒子が均一に分散しないことが懸念されるが、もしTiCの不均一分散が見られた場合には反応アーク溶解中に溶湯を揺動させる工夫を試みる。さらに、高TiC体積率複合材料合成のためには極めて高温度でのアーク溶解装置が必要となる。このため、非消耗型アーク溶解炉用W電極(10万円/本)を数本用意する必要がある。 また、透過電子顕微鏡観察により、TiC内部の微細組織観察を行う予定である。近年電顕フィルムの価格が著しく高騰しているが、必需的な消耗品である電顕用フィルム(100枚入り、12000円/箱)を20箱程度は購入する予定である。 さらに、学会発表、打合せ用出張旅費、データ整理等の作業者への謝金等も計画している。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2011

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Influence of N and Fe on α-Ti precipitation in the in situ TiC-titanium alloy composites.2011

    • 著者名/発表者名
      G. Amirthan, K. Nakao, H. Tsuda and S. Mori
    • 雑誌名

      Journal of Materials Science

      巻: 46 ページ: 1103-1109

    • DOI

      10.1007/s10853-010-4879-4

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Microstructure Analysis of The Channel Regions in Dual Two-phase Intermetallic Alloy.2011

    • 著者名/発表者名
      T. Moronaga, Y. Kaneno, H. Tsuda and T. Takasugi
    • 雑誌名

      Materials Research Society Symposium Proceedings

      巻: 1295 ページ: 370-375

    • DOI

      10.1557/opl.2011

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Effect of The Refractory Element Additions on Microstructure and Mechanical Property of Two-phase Intermetallic Alloys Based on The Ni3Al-Ni3V System.Pseudo-binary Alloy2011

    • 著者名/発表者名
      T. Moronaga, S. Ishii, Y. Kaneno, H. Tsuda and T. Takasugi
    • 雑誌名

      Materials Research Society Symposium Proceedings

      巻: 1295 ページ: 388-393

    • DOI

      10.1557/opl.2011

    • 査読あり
  • [学会発表] 2元系マグネシウム固溶合金の高温変形挙動2011

    • 著者名/発表者名
      瀧川順庸、上杉徳照、津田大、森茂生、東健司
    • 学会等名
      軽金属学会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2011年5月21日
  • [学会発表] 反応アーク溶解法で作成したTi/TiC複合材料の機械的性質および微細組織に及ぼす窒素添加の影響2011

    • 著者名/発表者名
      関元航, 津田大, 森茂生
    • 学会等名
      日本金属学会
    • 発表場所
      沖縄
    • 年月日
      2011-11-08

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公開日: 2013-07-10  

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