研究課題/領域番号 |
23560871
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
津田 大 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (80217322)
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研究分担者 |
松井 利之 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 教授 (20219372)
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キーワード | 二重複相材料 / 微細組織 / N2添加 / α-TI析出 / 硬度変化 |
研究概要 |
本研究では反応アーク溶解時のエネルギーを有効的に利用し、Nを積極的に取り入れることにより、TiC粒子中にα-Tiを密に析出させてTiCの靭性を改善することを目指している。ここでは、Ar+N混合雰囲気中で反応アーク溶解を行い、in-situでα-Ti析出TiC基複合材料を作製し、組織観察、X線回折、TEM、硬度測定などからTiC粒子中へのα-Ti析出に及ぼすNの影響を検討した。得られた結果は次のとおりである。 まず、Ar+N雰囲気中で反応アーク溶解を行い、Ti, C粉末からin -situでα-Ti基複合材料の合成を試みたところ、準備したすべての組成でTi基(TiC粒子を50vol%以上含む場合はTiC基複合材料)を作製することができた。また、Ar+N雰囲気中で作製した試料におけるTiC粒子と析出するα-Tiの間にはTiNを用いたときと同様に(111)TiC // (0001)α-Ti, [011]TiC // [2110]α-Tiの方位関係が存在する。 さらに、C,Nの量を調整することにより、TiCの体積率やTiC粒子中に析出するα-Tiの量を制御することが可能である。硬度測定の結果、TiC粒子の硬さはα- Tiの析出により著しく低下する。一方、Tiマトリックスの硬さはNの固溶量の増加に伴って著しく上昇することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、TiC量が多い(50vol%以上)Ti基複合材料の作製に際して、重量偏析の影響でTiC粒子がTiマトリックス中に均一に分散した複合材料が得られるか否か懸念されていた。 しかし、実際には溶融中に撹拌等の操作を必要とせず、ほぼ均一な複合材料を得ることに成功した。これの要因としては、アーク溶解中の溶湯の温度は、アーク放電により電極から供給されるアーク熱以外に、TiC合成時に放出される合成熱が合わさり、想定以上に高温に達しており、いわば沸騰状態となり、撹拌の必要がなかったものと推測される。 また、光学顕微鏡およびSEM観察時に観察試料料は鏡面状態に研磨されている必要がある。さらに、透過電子顕微鏡用サンプル作成時、ツインジェット法を用いて準備した。セラミックス粒子を多く含む複合材料の場合、通常は電解研磨で鏡面状態を得ることは困難なことが多いが、今回の分散粒子はNを多く含んだTiC粒子であったため、電気伝導度に優れたセラミックスであり、電解研磨での顕微鏡観察用試料作製が容易であったことも幸いしたと考えている。また同様の理由により、ツインジェット法によりTEM用薄膜試料作製も問題なく作成できた。 以上の点から、今年度はほぼ順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、窒素添加に伴うTi基複合材料中のTiC粒子に析出するα-Tiに着目し研究を継続してきた。この複合材料のTiマトリックス及びTiC粒子には窒素が固溶しており、また窒素量を増加させることによりTiC粒子中に板状Tiを析出し、金属/セラミックス/金属の二重複合材料が得られる。また、この材料を熱処理することによりTiC粒子への板状Ti析出促進の可能性なども示されている。つまり、添加元素であるCやNによる固溶強化、TiC粒子による分散強化、さらに硬いTiC粒子中に比較的軟らかい板状Tiを析出させることによる延性改善・靭性向上などが窒素量や熱処理条件を制御することにより可能となると推測できる。 しかし、窒素固溶量によっては、板状Tiによる延性改善以上にTi(C,N)粒子の粗大化による延性低下が顕著に見られるといった課題もある。また板状Tiの析出にはTiC中に存在する準安定相であるTi2Cが関わっていることが示唆されている。このTiC中に存在する炭素空孔の規則化による超構造であることは知られているが、非常に微細であり複合材料中における組織形態等は不明である。 従って来年度の研究では、Ti2Cは存在するが、窒素を含まない複合材料を熱処理することによって、Ti2CがTiC粒子中での板状Ti析出にどのような影響を及ぼすかを、透過型電子顕微鏡を用いることによって原子レベルで構造解析することを目的とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度では、窒素を含まないTi-C2元系Ti-TiC複合材労を作成し、熱処理によってTiC粒子中に析出させた二重複相材料の合成を試みる。 したがい当該年度もアーク溶解により試料を作成するためアーク電極用タングステン電極(10万円/本)を購入する。また、電気炉による熱処理を行うので封入用石英管等の消耗品も必要となる。組織観察は光学顕微鏡、SEMおよびTEMを計画している。TEMフィルム(15000円/箱)は最低15箱は必要となる。さらに、学会発表、打ち合わせ等の出張旅費、データ整理等の作業者への謝金も予定している。
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