研究課題/領域番号 |
23560875
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
八重 真治 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (00239716)
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研究分担者 |
松田 均 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (60118015)
福室 直樹 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (10347528)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | めっきプロセス / 密着性 / 触媒活性 / ナノ粒子 / 配線 / 金-シリコン合金 / 拡散 / 無電解ニッケルめっき |
研究概要 |
シリコン(Si)上への金属膜形成は、ULSIなどのnmから太陽電池などのdmスケールまで、幅広く利用されている。生産性、均一成膜性に優れ、非導電性材料にも成膜できる無電解めっき法は、Si上に得られるめっき膜の密着性に課題があった。我々は、最近、これまでにない高密着な金属薄膜をSi上に形成できる新規活性化処理法を開発した。この方法は、無電解置換析出した金ナノ粒子が特異的に高密着性を発現することが特徴であるが、その機構は不明である。本研究では、まず、この機能性発現機構を解明する。次いで、それに基づく、膜厚やパターニングなどの適応範囲拡大、金に代わる低コスト触媒材料開発、ウェハーボンディングなどへの応用展開を目指す。 本研究の方法は、Siウェーハを金イオンとHFとの混合水溶液に数秒から数十秒間浸した後に、一般的な無電解自己触媒めっき液に浸して、Si上に高密着な金属薄膜を得るものである。 この高密着性という機能の発現機構を解明するために、用いる金属塩の濃度、浸漬時間といった条件を変化させてめっきの始動性や密着性との関係を検討し、これらによって密着性が変化することを明らかにした。 金ナノ粒子を修飾したSiおよび、さらに無電解めっき膜を形成した試料の微細構造を観察するとともに組成および状態を分析した。構造解析では、試料断面の透過電子顕微鏡(TEM)および走査電子顕微鏡(SEM)観察を行い、組成および状態分析では走査オージェ電子分光およびグロー放電発光分光測定を行った。これにより、シリコン-金界面に合金相が形成されて密着性が発現していることを明らかにした。 さらに、フォトレジストによるパターニングに成功した。 これらの成果を基に、国内および国際学会発表をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目的である密着性発現機構についての知見を得ることに成功した。さらに、企業および公設共同研究開発機関との共同により、シリコン上にフォトレジストによるパターニングを行い、数十マイクロメートルレベルのめっき膜パターン形成に成功した。これは、平成25年度の実施計画を先取りしたものであり、実用面での研究進展を示している。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画では、平成24年度は「1.めっき膜厚の増大」と「2.金に代わる低コスト触媒材料の探索」、平成25年度は「1.めっき膜厚の増大、パターンめっきなどの適応範囲拡大」と「2.ウェハーボンディングへの展開」を推進する予定であった。平成23年度においてめっき膜パターニングに成功したこと、ならびに現在得られている厚さ1マイクロメートル程度の薄膜でも活用できるデバイスの具体的な提案が共同研究先よりなされたことから、今後は、その研究展開を優先するとともに、構造解析の深化を図ることを基本方針とする。 具体的には、レジストやマスクによりパターンを形成し、金ナノ粒子を析出させることで、めっき膜のパターニングを試みる。パターンの鮮明化や微細化を検討するとともに、本方法の特徴である高密着性との両立を図る。さらに、ニッケル以外のめっき材料への展開やデバイス特性に影響する抵抗などの因子の評価とその改善を図る。これらにより、高性能デバイス製造への応用実現を目指す。 一方で、本方法の機能性発現の最重要点であるシリコン\金属ナノ粒子\無電解めっき膜三相界面、ならびに水溶液中でのシリコン上への金属ナノ粒子形成に関する微細構造解析を進めることで、機能性発現機構の解明とその制御性の向上を図る。 さらに、以上の結果をまとめて、シリコン上の無電解めっきに用いる新規活性化前処理の機能性発現機構とその応用展開をテーマとして学会発表や論文投稿による、成果発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究進展に伴い、成果発表および共同研究機関での研究打合せのための旅費およびその他経費が見込額を上回った一方で、検討事項の絞り込みと既存物品の活用により物品費が当初の見込額を下回った。次年度以降は、今年度進展のあったパターニングを中心に検討し、実用に近いウェーハ上へのめっき膜パターン形成のためにウェーハ全面処理用のフッ素樹脂製容器などの物品を購入するとともに、引き続き共同研究開発機関での試料作製および成果発表のために旅費を活用する。
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